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日本を元気にする新・経営学教室

誰が小売価格を決めるのか?
家電製品の歴史に見る
建値制 vs. オ-プン価格制
京都大学大学院経営管理研究部教授 成生達彦

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],平野光俊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],根来龍之 [早稲田大学ビジネススクール教授、同ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)、早稲田大学IT戦略研究所所長],髙木晴夫
【第30回】 2011年9月19日
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 生産者が財を直接消費者に販売することは稀で、そのプロセスには卸や小売業者が介在する。この状況では、多くの場合、小売業者が小売価格を設定している。しかしながら、一部の財の販売に際しては、かつては建値制が用いられ、生産者が下流の流通業者の再販売価格(建値または定価)を指示していたし、現在でも、標準小売価格などを生産者が指定し、商品に表示することもある。

 家電業界では、1990年代の中頃に、一部の商品について、建値制からオープン価格制への移行がみられ、標準小売価格が記載されていない商品もある。今回は、寡占的な生産者、または地域市場で価格支配力を持つ小売業者のどちらが小売価格を設定するか? この選択に影響を与える要因について検討する。

1.フランチャイズ料

 第1の要因は、生産者がフランチャイズ料を徴収することによって、小売業者に生じた利益を回収できるか否かである。フランチャイズ料を徴収できない場合には、生産者と小売業者の各々が、自らの利潤を最大にするようにマージンを設定するため、小売価格が高くなる。このような二重マージン(第16回参照)が生じる結果、販売量が減り、チャネル全体の利潤も少なくなる。

 このことを回避するためには、生産者は標準小売価格を指定することによって、小売価格の上限を規制する必要がある(標準価格を上回る小売価格の設定は、消費者からの反感を買うため、小売業者は躊躇しよう)。

 フランチャイズ料を徴収できる場合には、生産者は出荷価格を低めに設定する。このとき、小売業者が一定のマージンを確保するように小売価格を設定したとしても、出荷価格が低いため、小売価格もそれほど高くはならない。その結果、フランチャイズ料を徴収できない場合と比べて販売量が多く、チャネルの利潤も多くなる。

 この際、小売業者に生じた利益をフランチャイズ料によって回収すれば、生産者も多くの利益を得ることができる。このように、フランチャイズ料を徴収できるのであれば、二重マージンの問題は軽減されるから、生産者が小売価格を規制する必要はなくなる。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

平野光俊(ひらの みつとし) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1980年早稲田大学商学部卒業、94年神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了、98年同大学院博士課程修了、博士(経営学)、2002年から同大学院助教授、2006年から現職。経営行動科学学会会長、日本労務学会常任理事、日本労働研究雑誌編集委員。主著に『日本型人事管理』中央経済社。

根来 龍之(ねごろ たつゆき) [早稲田大学ビジネススクール教授、同ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)、早稲田大学IT戦略研究所所長]

京都大学卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了、鉄鋼会社、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て現職。京経営情報学会会長、国際CIO学会誌編集長、CRM協議会副理事などを歴任。2001年度より早稲田大学教授。2010年10月より早稲田大学ビジネススクール・ディレクター。ITと経営、ビジネスモデルなどを研究テーマとする。『代替品の戦略』(東洋経済新報社)、『デジタル時代の経営戦略』(共編著、メディアセレクト)、『CIOのための情報・経営戦略』(共編著、中央経済社)など著書多数。ブログ「ITと経営」

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