生産者が財を直接消費者に販売することは稀で、そのプロセスには卸や小売業者が介在する。この状況では、多くの場合、小売業者が小売価格を設定している。しかしながら、一部の財の販売に際しては、かつては建値制が用いられ、生産者が下流の流通業者の再販売価格(建値または定価)を指示していたし、現在でも、標準小売価格などを生産者が指定し、商品に表示することもある。

 家電業界では、1990年代の中頃に、一部の商品について、建値制からオープン価格制への移行がみられ、標準小売価格が記載されていない商品もある。今回は、寡占的な生産者、または地域市場で価格支配力を持つ小売業者のどちらが小売価格を設定するか? この選択に影響を与える要因について検討する。

1.フランチャイズ料

 第1の要因は、生産者がフランチャイズ料を徴収することによって、小売業者に生じた利益を回収できるか否かである。フランチャイズ料を徴収できない場合には、生産者と小売業者の各々が、自らの利潤を最大にするようにマージンを設定するため、小売価格が高くなる。このような二重マージン(第16回参照)が生じる結果、販売量が減り、チャネル全体の利潤も少なくなる。

 このことを回避するためには、生産者は標準小売価格を指定することによって、小売価格の上限を規制する必要がある(標準価格を上回る小売価格の設定は、消費者からの反感を買うため、小売業者は躊躇しよう)。

 フランチャイズ料を徴収できる場合には、生産者は出荷価格を低めに設定する。このとき、小売業者が一定のマージンを確保するように小売価格を設定したとしても、出荷価格が低いため、小売価格もそれほど高くはならない。その結果、フランチャイズ料を徴収できない場合と比べて販売量が多く、チャネルの利潤も多くなる。

 この際、小売業者に生じた利益をフランチャイズ料によって回収すれば、生産者も多くの利益を得ることができる。このように、フランチャイズ料を徴収できるのであれば、二重マージンの問題は軽減されるから、生産者が小売価格を規制する必要はなくなる。