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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第1回】 2011年10月3日
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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

経済も人も、常に
成長を目指さなくてはいけないのか

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好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「ほどほど」には2種類の意味がある

 私は「ほどほど」という、二つの意味を想定しています。

 一つは、「全力投球」「100%の力」という言葉に代表される、やりすぎに対する問題提起です。何かに取り組むときには、100%の力で全力投球し続ける。この考え方に危険信号を発したいのです。

 もう一つの意味は、よく言われる二分思考への疑問です。二分思考とは、すべての物事を、対立する二つの概念のどちらかに分けてしまおうとする思考です。つまり、現代人が「100か0か」「イエスかノーか」「白か黒か」「全か無か」などと二者択一で考えてしまう傾向に警鐘を鳴らしたいのです。

 この二つの意味は分けて考える必要があると私は思っています。まず、第一の点からお話ししていきたいと思います。

 この現象は、最近になって顕著になったわけではありません。随分と前からあったことです。特に、バブル時代以降拍車がかかってきたように見えます。

 背景にはさまざまな要因があります。一つは、1990年代半ばから後半にかけて、バブル崩壊後の日本に導入されたアメリカ型の成果主義です。

 高い成果を上げて他の人より抜きん出ることが唯一の尺度となり、人々は全力で走り続け、息切れした人間が脱落する社会になっていきました。

 もう一つの要因がそれ以前に起こっています。80年代に始まった、いわゆる「自分探しブーム」です。

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    香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

    1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


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