ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
エディターズ・チョイス
2011年10月24日
著者・コラム紹介バックナンバー
中野剛志 [京都大学大学院工学研究科准教授]

米国丸儲けの米韓FTAから
なぜ日本は学ばないのか
「TPP亡国論」著者が最後の警告!

previous page
2
nextpage

韓国は無意味な関税撤廃の代償に
環境基準など米国製品への適用緩和を飲まされた

 まず、韓国は、何を得たか。もちろん、米国での関税の撤廃である。

 しかし、韓国が輸出できそうな工業製品についての米国の関税は、既に充分低い。例えば、自動車はわずか2.5%、テレビは5%程度しかないのだ。しかも、この米国の2.5%の自動車関税の撤廃は、もし米国製自動車の販売や流通に深刻な影響を及ぼすと米国の企業が判断した場合は、無効になるという条件が付いている。

 そもそも韓国は、自動車も電気電子製品も既に、米国における現地生産を進めているから、関税の存在は企業競争力とは殆ど関係がない。これは、言うまでもなく日本も同じである。グローバル化によって海外生産が進んだ現在、製造業の競争力は、関税ではなく通貨の価値で決まるのだ。すなわち、韓国企業の競争力は、昨今のウォン安のおかげであり、日本の輸出企業の不振は円高のせいだ。もはや関税は、問題ではない。

 さて、韓国は、この無意味な関税撤廃の代償として、自国の自動車市場に米国企業が参入しやすいように、制度を変更することを迫られた。米国の自動車業界が、米韓FTAによる関税撤廃を飲む見返りを米国政府に要求したからだ。

 その結果、韓国は、排出量基準設定について米国の方式を導入するとともに、韓国に輸入される米国産自動車に対して課せられる排出ガス診断装置の装着義務や安全基準認証などについて、一定の義務を免除することになった。つまり、自動車の環境や安全を韓国の基準で守ることができなくなったのだ。また、米国の自動車メーカーが競争力をもつ大型車の税負担をより軽減することにもなった。

 米国通商代表部は、日本にも、自動車市場の参入障壁の撤廃を求めている。エコカー減税など、米国産自動車が苦手な環境対策のことだ。

previous page
2
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
チームの生産性をあげる。

チームの生産性をあげる。

沢渡あまね 著

定価(税込):本体1,600円+税   発行年月:2017年7月

<内容紹介>
どんな職場でも働き方は変えられる!人気の業務改善士が教える、仕事の進め方を変えて、アウトプットを最大化する8ステップ。日本マイクロソフト、ヤフー、日本旅行、ナムコ、NTTデータ、大阪王将、ジヤトコ…他、企業事例多数!「働き方改革」実践書の決定版!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍

(POSデータ調べ、7/2~7/8)



中野剛志 [京都大学大学院工学研究科准教授]

1971年神奈川県生まれ。1996年東京大学教養学部教養学科(国際関係論)卒業,通商産業省(現・経済産業省)に入省。2001年英エディンバラ大学大学院(政治思想)に留学し、優等修士号(Msc with distinction)を取得し卒業。2003年論文‘Theorising Economic Nationalism'がイギリス民族学会(ASEN)Nations and Nationalism Prizeを受賞。2000年及び2003年から2008年まで、資源エネルギー庁新エネルギー対策課などに在籍した経験から、エネルギー政策に詳しい。現在、京都大学大学院工学研究科(都市社会工学専攻)准教授として出向中。『国力論』(以文社,2008)、『考えるヒントで考える』(幻戯書房、2010年)、『TPP亡国論』(集英社、2011年)など著書多数


エディターズ・チョイス

ダイヤモンド社書籍オンライン編集部によるインタビューまたは厳選した特別寄稿。経済、産業、経営、社会問題など幅広いテーマを斬新な視点で紹介する。

「エディターズ・チョイス」

⇒バックナンバー一覧