マレーシアのイセタンは
なぜダメなのか?
「クールジャパン」のイベントが軒並み苦戦しているというニュース(記事はこちら)を読んだ。その中にも紹介されていたが、マレーシアの首都、クアラルンプールの中心部での、イセタン(伊勢丹)・ジャパンの苦戦ぶりが伝えられていた。
そのイセタンには、開業以来、筆者も何度も足を運んでいる。「本物の日本」を売り込もうとするコンセプトのもと、ここでしか手に入らない優れた日本の品々が並んでいるからだ。だがその一方で、残念ながら、地元の人々の心をつかむのは難しいとも感じた。
例えば開業直後、食品売り場には、日本の麺類が多数置かれていた。そばだけでも、二八、十割、更科など、なかなか日本でも見かけないくらい素晴らしい品ぞろえだった。そばつゆも、市販のものから、さまざまな産地特産のユニークな出汁までたくさん揃えてあった。
筆者が感心して見ていると、中華系マレーシア人と思しきカップルも興味深そうにみている。見るからに裕福そうな彼らは、店員にこう尋ねた。
「Do you have Towari-soba, which is made from 100% Soba-flour? (そば粉100%で作った、十割そばはありますか?)」
十割そばを知っているとは、かなりの「日本通」だと思った。
だがマレーシア人の店員が「これですよ」と指さしたのは、二八そばだった。失礼とは思ったが、筆者はその場に割り込み、十割そばの場所を教えた。
その後、そのカップルは再び店員に、「そばつゆはどこですか」と尋ねた。店員が指さしたのはなんと醤油のコーナーだった。差し出がましいとは思ったものの、再び筆者はそばつゆのコーナーへ彼らを案内した。
この一件から、店員の教育がうまくいっていないことがわかる。まず、マレーシア人の店員自身、そもそも「そば」というものについてほとんど知らないはずだ。そこで、二八とか十割とかいきなり言われても何のことか、何が違いなのかも分からないし、学ぶモチベーションも低いだろう。