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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第7回】 2011年11月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

目標を数字にすると、目標が目的になってしまう。
プロセスを楽しみ自己満足できればそれでいい

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数値化された目標に縛られてしまう人々

 本来、目標は何かを得るために立てるものだと思います。

 しかし、目標を数値化してしまったことでいつの間にか数字をクリアすることが目標にすり替わり、闇雲に頑張っている人を数多く見かけます。

 成長したい、夢を実現したい。人間が求めてやまないことは数値化できないことがほとんどではないでしょうか。しかし、人は現実の行動に落とし込むとき、なぜか数値化せずにはいられないようです。

 私の診察室にも、頑張りすぎて疲れ切ってしまった人が毎週のように訪れます。とある事例をご紹介しましょう。

 その方の平日は仕事で手一杯、土日しかゆっくり休む時間がないという状況です。土日ぐらいのんびり過ごせばいいと思うのですが、その方は目標を課しました。

 「月に○回以上ジムに行く」

 どんなに疲れていても、その方は律儀に目標をクリアし続けます。

 ところが、あるときジムが改装工事で休館になったそうです。それを知って心からホッとしたといいます。

 「今週は行かなくていいんだ」

 普段は放置しっ放しだった片づけものを済ませ、空いた時間でのんびり散歩までできたと嬉しそうに語っていたのが印象的でした。

 その方にとってジムに行くことは、自ら数値化した義務をクリアするものでしかなくなっていました。まるで苦行に取り組んでいるかのようです。

 おそらく当初は、ジムに行って健康維持やストレス発散をしようと考えていたことでしょう。それなのに、ジムに行くことでストレスをため込んでしまっていたのです。

 その方に仕事の場面でも同じようになっていないか尋ねると、案の定、自分で目標を数値化して、かえってそれに縛られてしまっていると告白されていました。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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