ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

其の5「士は己を知る者のために死ぬ」(史記)
顔を見るのも嫌な人間が上司になったら

江上 剛 [作家]
【第5回】 2011年12月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 最低、最悪の上司に仕えたことがある。まさに拙書『もし顔を見るのも嫌な人間が上司になったら』(文春新書)のタイトル通りの男だ。

 彼は、私の課長として赴任してきた。仮にAとしておこう。私は彼の直属の部下、すなわちナンバー2だ。

最悪上司の最悪な行状

 Aの最低、最悪を幾つか列挙しよう。

①エリート風を吹かせまくる。

 Aは、かつての銀行トップの縁戚だという噂を自分で流していたが、その血統が有効に作用したのか、人事部などでキャリアを積んだエリートだった。

 赴任直後、私に聞こえるように、人事部の上司に「私も営業店の課長ですよ。現場の経験を積めということでしょうね。しっかりやらせていただき、すぐにそちらに戻りますから。よろしくお願いします」と電話した。まるで自分は、君たちのような現場育ち(当時私は営業店しか経験していなかった)とは違うのだとでも言いたげだった。

 そしてつかつかと私に近寄り「江上君、家を買っていないなら、君は私の近くに家を買いたまえ。偉くなれるから」とのたまわったのだ。Aの自宅は田園調布だった。私は当然、「無理です」と断った。

②下の叱り方が尋常じゃない。

 Aは、部下のやる気を無くさせるような叱り方をした。私には何も言わないが、もっと弱い、要領の悪い部下には、大声で叱り、謝っても、謝っても、逃げ道を塞ぎ、ギリギリと締め上げた。傍で聞いているだけで胃が痛くなった。部下を育てるために叱っているというより、上司に向って、部下を指導しているというアピールのためのようだった。叱られた部下は、どんどんやる気を無くして行った。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

江上 剛 [作家]

えがみ ごう/1954年1月7日兵庫県生まれ。本名小畠晴喜(こはた はるき)。77年3月早稲田大学政経学部卒業。同年4月旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。高田馬場、築地などの支店長を歴任後、2003年3月同行退行。1997年に起きた第一勧銀総会屋利益供与事件では、広報部次長として混乱収拾に尽力する。『呪縛 金融腐蝕列島』(高杉良作・角川書店)の小説やそれを原作とする映画のモデルとなる。2002年『非情銀行』(新潮社)で作家デビュー。以後、作家に専念するも10年7月日本振興銀行の社長に就任し、本邦初のペイオフを適用される。


逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

作家・江上剛氏は、その人生で2回も当局による強制捜査を経験した。その逆境にあって、心を支えくれたのが、「聖書」「論語」「孫子」などの古典の言葉である。ビジネス界に身を置けば、さまざまな逆風にされされることも多い。どんな逆境にあっても、明るく前向きに生きる江上剛氏が、柔術ならぬ“剛術”で古典を読み解き、勇気と元気の“素”を贈る。

「逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―」

⇒バックナンバー一覧