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千石正一 十二支動物を食べる 世界の生態文化誌

~「酉」を食べる~
ニワトリは、時計とギャンブル

千石正一 [動物学者/財団法人自然環境研究センター 研究主幹]
【第7回】 2008年1月18日
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肉はチキン

 インドあたり(インド・バングラデシュ・スリランカ等)を旅行中だと、機内食とかの、食事をサーヴされる局面では、“vege or non-vege ?”(ベジタリアンか?)とたずねられることがよくある。一般的日本人としては“non-vege”と答えることになるわけだが、出てくる肉料理はたいがい鶏である。イスラムでは豚が食べられぬし、ヒンディーでは牛が禁食なので、どこのタブーにもかかっていない鶏肉が選ばれることになる。日本でこそチキンは安物肉扱いされているが、鶏肉がご馳走である世界は狭くないし、妥当な選択であろう。

 食肉のトリには鳩だのアヒルだの、かなりの種類があるが、まずは鶏(ニワトリ)だろう。食肉としても代表的な存在であることは、上述の通りである。当然、ニワトリは食用として家畜化されたと思うであろう。たとえ鳩が食用として飼育が開始されたのではないにしても。ところが、ニワトリは、本来の飼育目的が食用ではないのである。

鶏は刻を告げる

 「鳥目」ということばがあるぐらいで、トリは夜では目が見えないし、活動しないのが普通である。トリと同じく昼行性の動物であるヒトにも、視覚の封じられる夜は、危険な世界であった。闇という語のニュアンスが示す如く、それは死に近い。

 昼の生命活動と、夜の近似死。夜に終わりを告げ、昼を開始させる音がある。それは死と生を分ける霊力を持つと考えられたであろう。早朝に大きな声で鳴く、鶏の声である。正確にはニワトリの原種である野鶏、セキショクヤケイの刻の声だ。熱帯林にとどろくヤケイの声は、昔の人々を鼓舞させたであろう。1日の活力を与えたことであろう。

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千石正一 [動物学者/財団法人自然環境研究センター 研究主幹]

1949年生まれ。動物の世界を研究・紹介することに尽力し、自然環境保全の大切さを訴える。TBS系の人気番組『どうぶつ奇想天外!』の千石先生としておなじみ。同番組の総合監修を務める。また、図鑑や学術論文などの幅広い執筆活動のかたわら、講演会やイベントの講師なども多数務めている。著書多数。


千石正一 十二支動物を食べる 世界の生態文化誌

動物学者・千石正一が、食を通じた人類と動物の歴史について、自身の世界各地での実体験を交えながら生態学的・動物学的観点で分析。干支に絡めた12の動物を紹介する。

「千石正一 十二支動物を食べる 世界の生態文化誌」

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