AIだのフィンテックだのと、ますますハイテク化が進展する21世紀において、日本の教育現場がいかに絶望的か、ほとんど報道されることもない実情を今回はお伝えする。

ウェブ環境が示す
学校現場の実態

日本の未来を担う教育現場の残念すぎるITリテラシー

 僕はいま、中高生に先端科学を伝えるプログラムを企画し、実行している。その過程で数多くの中学・高校にアプローチしている。アプローチといっても飛び込み営業みたいなものだが、基本的にターゲットにしているのは中高一貫の進学校で、高偏差値の私立校だ。つまりは、未来のエリートを育成する学校でもある。そのような学校にアプローチするために、ウェブサイトを見て、問い合わせ先を調べて回っている。これが企業相手であれば、基本的にはウェブサイトに問い合わせフォームがあるし、ない場合も問い合わせのためのメールアドレスが記載されている。企業によっては、電話番号もメールアドレスも掲載されておらず、問い合わせフォームだけという場合もある。

 ところが中学・高校の場合は、まず問い合わせフォームがある学校はほとんど皆無。メールアドレスも載っていない。大多数の学校が「電話番号のみ」である。前回の記事でも書いたが、電話もFAXもすでに時代遅れのツールになっているにもかかわらずだ。

 しかしながら、問い合わせ先が電話しか載っていなければ、まずは電話するしかない。学校の代表電話にかけ、受付の人に用件を伝え、担当者につないでもらい、同じ内容を再度話す。しかし、いきなり電話してきた人間の話などその場ですぐに理解してもらえるはずもないので、当然「学内で検討するために資料や案内書を送ってくれ」と言われることになる。まあ、それはそれで仕方のないことでもあるので、こちらも「メールで案内ファイルを送りたい」と伝えるのだが、すると今度は「郵送かFAXにしてくれ」と言われてしまう。

 多くのビジネスパーソンには常識だが、いまどきは大抵のビジネス書類はワードかパワポで作成する。つまり、原本はデジタルデータだ。デジタルで作成した書類をなぜわざわざプリントアウトして、郵送したりFAXしたりしなければならないのか。メールであれば同一書類を添付して送るだけで済む。しかし紙で送るとなると、相手先をいちいち変えてプリントアウトする必要がある。手間がかかるだけでなく、お金と資源の無駄だ。

 IT人材の育成が叫ばれ、小学生からプログラミング教育をといわれる時代に、トップ校の実態がこれでは本当に嘆かわしい。それで気になって、「スーパーサイエンスハイスクール」(SSH)ではどうなっているのかも調べてみた。スーパーサイエンスハイスクールとは、その名のとおり、「将来の国際的な科学技術関係人材を育成するため、先進的な理数教育を実施する高等学校等」(文科省ウェブサイトより)である。科学技術立国としての日本の将来を担う人材育成のために、文科省が平成14年度より実施している制度で、科学技術や理科、数学を重点的に教育する学校が指定されている。