仕事で成果を上げるには<br />中世ヨーロッパに伝わる“秘法”が参考になるダイヤモンド社刊
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「何事かを成し遂げられるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない。もちろん、できないことによって何かを行うことなど、とうていできない」(『明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命』)

 したがって、仕事で成果を上げるには、何をおいても、“自らの強み”を知らなければならない。だが、この自らの強みを知る人が著しく少ない。そもそも、そのようなことは考えたこともないという人がほとんどである。

 ところがここに、ドラッカーが推奨する秘法がある。すなわち、“フィードバック分析”である。

 何かをすることを決めたならば、成果として何を期待するかを書き留める。9ヵ月後に、その期待と結果を照合する。こうして誰でも、自らの強みと弱みを客観的に知ることができるようになる。

 これは14世紀に、ある無名のドイツの神学者が教えたことだという。その約150年後、プロテスタントのカルヴァン派の創始者、ジュネーブのジャン・カルヴァンと、カトリックのイエズス会の創始者、イグナチウス・ロヨラがほとんど同時に採用し、それぞれの牧師や修道士に実行させた。

 たまたま1536年という同じ年に創立されたこの2つの会派が、いずれもわずか30年のあいだに、前者はヨーロッパ北部、後者は南部において、支配的な存在にまで成長したのはこの手法によるところが大きかったという。

 カルヴァン派の牧師にせよ、イエズス会の修道士にせよ、ほとんどが普通の人たちだった。その彼らが、自らの活動について目標と結果を照合することによって、自らの強みと弱みを知り、その強みを最大限に生かすことによって、成果を上げていった。

 ドラッカー自身、この手法を使って自らの強みとその変化を把握し、毎年の重点項目を決めてきた。

「わずか数十年前までは、ほとんどの人にとって、自らの強みを知っても意味がなかった。生まれながらにして、仕事も職業も決まっていた。農民の子は農民となり、職人の子は職人になるしかなかった。ところが今日では、選択の自由がある。したがって、自らが属するところがどこであるかを知るために、自らの強みを知ることが必要になっている」(『明日を支配するもの』)

週刊ダイヤモンド