ダイヤモンド社刊
【絶版】

「資源を成果に向けて集中することほど、面倒で、評判の悪いことはない。ノーと言わなければならないからである」(『乱気流時代の経営』)

 資源を生産的な仕事に集中して、初めて生産性を上げることができる。逆に、資源の分散は、成果を上げることを不可能にする。

 そこで、ドラッカーは、集中のための方策を3つ教える。

 第1は、あらゆる活動を常時見直していくために、彼が“体系的廃棄”と名づけたものを制度化することである。

 全事業について、「まだ手がけていないと仮定して、その後明らかになった新しい知見をもってしても、手をつけることは得策か」を問う。もし、答えがノーならば、「調べよう」ではなく、「どうしたらやめることができるか」を考える。そしてやめる。

 第2は、彼が“組織のウエートコントロール”と呼ぶものを制度化することである。新たな仕事を1つ手がけるごとに、すでに行なっていることを一つ捨てることにする。

 特に、このことは、本社のスタッフ部門の活動についていえる。常に、「その新しい仕事は何を切り捨てたうえで行なうつもりか」を問う。スタッフの仕事は、集中して初めて成果をもたらすものだからである。もちろん、このウエートコントロールの原則は、製品や流通チャネルなど、あらゆる活動に適用していかなければならない。

 第3は、既存の事業のための通常の事業予算に加え、ドラッカーが“機会予算”と呼ぶものを制度化することである。事業予算の各項目については、「最低限どれだけ必要か」を問い、“機会予算”については、「最大の成果を得るにはどれだけ必要か」を問う。

 機会には糧食を与え、問題からは糧食を絶てとの思想に基づくこれら3つの原則は、企業だけのためのものではない。公的機関をはじめ、あらゆる種類の組織のためのものでもある。

「乱気流の時代にあっては、突如として襲ってくる烈風に耐えるとともに、突如として現れる予期せぬ機会を利用しなければならない。そのためには、資源を食うばかりで、非生産的な昨日のものを切り捨てていかなければならない」(『乱気流時代の経営』)

週刊ダイヤモンド