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3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

最初から全員一致ではダメ
うわべを決めただけでは問題の本質に辿り着かない

上田惇生
【第278回】 2012年3月5日
著者・コラム紹介バックナンバー
ダイヤモンド社刊
1890円(税込)

 「一流の意思決定者は、きわめてシンプルなルールをもっている。重要なことで最初から全員の同意を得られる場合には、あえて決定はしないというルールである。全員が考える時間をもてるよう、決定を先延ばしにする」(『ドラッカー名著集(4)非営利組織の経営』)

 ドラッカーは、独裁や官僚支配のない社会を探し、自由と自治を基本とする産業社会がその答えたりうると考えた。サラリーマン経験のないドラッカーに、企業の内部を見せてくれたのが、第二次世界大戦当時、すでに世界最大・最強のメーカーとなっていたGM(ゼネラル・モーターズ)だった。

 ドラッカーは、GMの主な事業所すべてを見て、主な会議すべてを傍聴した。その一つの会議で、彼は、アルフレッド・P・スローン会長が「本件に異議はありませんか」と聞き、全員がうなずいたとき「それでは次回もう一度検討したい」と言うのを目撃した。

 企業が抱える問題はすべて現実の世界のものである。当然複雑である。あたかも命あるもののようである。単純に答えの出せる問題などありはしない。簡単に答えが出るときは、なにも考えていないか、理屈に縛られているか、あるいは欲にかられているときである。

 10人の役員がいれば10の視点があるはずである。

 米国の政治学者メアリー・P・フォレットは、「意見の違いを大事にせよ」と言った。しかも、「意見の違いがあるときは、誰が正しいかを考えてはならない」「何が正しいかさえ考えてはならない」とした。全員の答えが正しいと考えるべきである。ただし、それは違う問題に対してである。全員が違う現実を見ているからだ。

 むしろ意見の違いが、問題を多面的かつ立体的に見ることを可能にする。しかも、相互理解までも可能にしてくれる。

 「意見の対立を、問題に対する共通認識にまでもっていくことができれば、あとは、連帯感と責任感をもたらすことは容易である。アリストテレスに発し、初期キリスト教会の原則とまでなった言葉がある。[本質における一致、行動における自由、あらゆることにおける信頼]である。信頼が生まれるには、あらゆる反対意見が公にされ、真摯な不同意として受け止められなければならない」(『非営利組織の経営』)

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上田惇生(うえだ・あつお) 

 

ものつくり大学名誉教授、立命館大学客員教授。1938年生まれ。61年サウスジョージア大学経営学科留学、64年慶應義塾大学経済学部卒。経団連、経済広報センター、ものつくり大学を経て、現職。 ドラッカー教授の主要作品のすべてを翻訳、著書に『ドラッカー入門』『ドラッカー 時代を超える言葉』がある。ドラッカー自身からもっとも親しい友人、日本での分身とされてきた。ドラッカー学会(http://drucker-ws.org)初代代表(2005-2011)、現在学術顧問(2012-)。

 


3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

マネジメントの父と称されたドラッカーの残した膨大な著作。世界最高の経営学者であったドラッカーの著作群の中から、そのエッセンスを紹介する。

「3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言」

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