制度がなければ自分で作る。
それがベンチャーという会社

岩瀬 新人の時に教わって良かったことはありますか?

田中 先ほど1社目のSo-netを「いい会社」と言いましたが、本当にそうでした。議事録の取り方とか資料のファイリングの仕方とか電話は早く出ろとか(笑)。社会人としてきちんとしている、まっとうな先輩がいまして、その方に社会人としての基本的なことを教えてもらいましたね。

岩瀬 楽天で最初にやった仕事はどういうものだったのですか?

田中 入社1日目に忘れられない出来事があったんです。まさに最初の仕事が、「田中くん、ゴミ箱に入っているゴミを集めて」でした。

 So-netはソニーのグループ会社です。オフィスの清掃は業者の方がやってくれていました。僕はそれを当たり前のことだと思っていたんですね。それが違った。自分たちでやらなきゃいけない。考えてみたらそうですよね。ひとり暮らしの家で、自分がゴミ捨てに行かなければ、明日もゴミはそこにある…。

岩瀬 当たり前だと思っていたことがそうじゃなかった。

田中 コピー機がある、机の上に名刺が置いてある、人事制度があるのも当然で、ないのが間違っているとどこかで思っていたんです。ベンチャーに行きたいと言っていたくせに「制度がない」などと言っている自分がいた。振り返ると、本当にイケてないヤツだったと思います(笑)。

 制度がなければ制度を自分で作るのがベンチャー、そういう当たり前のことを、初日に気づかせてもらいました。