第3回のゲストは、人気ブログ「金融日記」の管理人の藤沢数希さん。 外資系投資銀行に身を置く辛口批評家の口から出た言葉は、 意外にも「上司にとことん騙されよ」。その真相とは?(一部肩書きは取材時のものです)

 

「良き社畜」となった入社1年目

岩瀬 藤沢さんの入社1年目は、どんな仕事をされていましたか。

藤沢 外資系投資銀行でクオンツ・アナリストをしていました。
普通のアナリストは株や債券の個別銘柄に対して、財務諸表の分析とか将来の利益予想をしますが、 クオンツ・アナリストは、簡単に言うともうちょっとマクロで見て、いろんなデータをコンピュータを使って定量分析したり、様々な数理モデルを使って投資戦略を練る仕事です。

岩瀬 そこでの業務は?

藤沢 最初は上司の丁稚奉公ですよね。上司が投資家向けにレポート書いたり、社内のセールスやトレーダーに頼まれた分析をするのですが、それのデータを作ったり、下書きを書いたり、と言った泥臭い仕事です。上司が夕方5時ぐらいに僕のところにやって来て「これやっといて」って言うんですよ。その後に、上司は接待だとかなんかで、お客さんとキャバクラに行ったりしてました。

岩瀬 夕方ですか…。

藤沢 いつも、夕方でしたね。僕はいつもそれを夜11時とか12時ぐらいまで、ずっとやっていたんです。 終電が終わったらタクシー。で、次の朝までに必ず出すんですよ。

岩瀬 なるほど。それが最初の1年ぐらいですか。

藤沢 最初の1年ぐらいですね。

岩瀬 最初の1年で学んだビジネス・パーソンとしての基礎素養はありますか?

藤沢与えられた仕事をとにかく一生懸命やることです。そして、上司にどうやって気に入られるか。それが1年目のすべてだと思います。

岩瀬 辛口ブロガーの藤沢氏から意外な言葉が…。最初は上司に気に入ってもらえなかったのですか?

藤沢 そうですね。僕は物理学の研究者から金融機関に転身したので、入社当初は金融や経済についての知識がぜんぜんありませんでした。だから、最初の2、3ヵ月は「お前、こんなこともできないのか」みたいな感じで上司にいつも怒鳴られていました。まあ、率直に言って粗末に扱われていましたね。

岩瀬 どうして粗末に扱われたんですか。

藤沢 言われたことがすぐできないからですね。何も教えてくれない上に、やれって言われてできないとすごく怒られる。最初は本当に辛かった。

  しかも、僕は研究者の道を捨てて、金融機関に就職していたので、最初の数ヵ月でドロップ・アウトしたら、このまま一生「落伍者」のレッテルをはられて社会の底辺で生きていくしかないと思いつめていたので、逃げ道もない。もう、上司に好かれる以外に、生きる道がないんです。