こうした「受給額」-「負担額」=「再配分額」として実質的な再配分の効果を見る考え方は、かつての子ども手当の議論(親の所得制限が随分議論された)を振り返っても、盲点になりやすいことがわかる。

 現在の我が国の制度を考えるとしても、受給にあれこれ条件が付く生活保護制度があり、完全積立方式ではない年金制度を通じた大きな富の移転があり、さらに複雑な税制を通じた富の再配分があり、全体の効果がわかりにくくなっているのと共に、それぞれの制度の手続きと複雑さに国民は多大なコストを払っている。その分、官僚の仕事と収入が増え、税理士や社労士のような職業の収入も増えることになっている。

今の支出をBIに置き換えても、
現状以上に財源を心配する必要なし

 また、次のポイントは、「ベーシックインカム」という言葉が持つ意味に引っ張られて、多くの論者(時には筆者自身も)が陥りやすい先入観の問題だ。

 ベーシックインカムを「生活に必要な最低額を支給される、国による絶対的な保証」と考えて財源問題を論じてしまうと、現在の制度との比較が非常に難しくなってしまう。

 しかし、たとえば、現状でも年金、生活保護、雇用保険など、富の再配分を行なう制度はあるわけで、検討の第一歩として、これらの支出をベーシックインカムに置き換えると考えるなら、財源の問題を少なくとも規模的には現状の諸制度以上に大きく心配する必要はない。

 厚労省のホームページで、社会保障給付費を見ると、平成21年度で総額が約99兆8500億円であり、ここから「医療」の約30兆8400億円を差し引くとざっと69兆円となるが、これを人口を1億2500万人として単純に割り算すると、すでに月に4万6000円くらいのベーシックインカムに相当する(75兆円あれば、「1月5万円」になる)。4人家族なら、18万4000円だ。すでにそこそこのレベルに達していると思われないか。