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“依存症”ならば自己責任論は成立しない
規制なきまま社会と共存していけるのか
――ソーシャルゲームの何が問題か【後編】

石島照代 [ジャーナリスト],小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授]
【第30回】 2012年4月19日
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 ディー・エヌ・エーとグリーの二社が牽引する、いわゆるソーシャルゲームの勢いが止まらない一方で、様々な問題が社会問題化しつつある。ソーシャルゲームをパチンコ産業として捉えた場合の経済効果を扱った前編、消費者(ユーザー)の観点から捉えた中編に続いて、後編はソーシャルゲームの過消費における自己責任論の妥当性と、コンテンツ業界と社会のサステナビリティの関係について検討する。

ハマるコンプガチャの作り方
「優越感」「安心感」を刺激するため全力で煽る

 前回は、ヒマつぶしをきっかけにソーシャルゲームを始めたら、コンプガチャに大ハマりして、1年で150万円を使った主婦の話を紹介した。なぜ、自分が欲しいアイテムを直接買えない(コンプ)ガチャという仕組みは、そこまで人々を魅了するのだろうか。そこで今度は、実際にあるソーシャルゲーム関係者に話を聞いた。

 「ソーシャルゲームの評価は、ガチャを何度も引かせることができるかどうかです。ユーザーが感じるおもしろさなんて考えていません。ですので、ユーザーさんに、気持ちよく何度も何度も継続的にガチャを引いてもらうことに、我々は全力投球します。

 前回、『恋してキャバ嬢』でのランキングの話が書いてありましたが、このランキングの存在はコンプガチャを引かせるのに大変効果的に働きます。ガチャの入ったゲームで、ユーザーが他人よりも極端に強くなるためには、ガチャ、特にコンプガチャをやるしかない。なぜなら、極端に強くなれるアイテムは無料では絶対に手に入らないからです。

 上位ランキングに食い込むためには、月額にして10万円以上コンプガチャを使わないと難しい。なので、1年で150万円使う話は、ソーシャルゲームでは普通です。

 たとえば、強い自分を演出できるコンプガチャ付きイベントは、そのひとつです。弱い人は、一人じゃ倒せないから、より強い人に助けを求めますし、強い人は、ヘルプをお願いされた手前、強さを見せ付けたくなる。

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石島照代 [ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

 

小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。専門はゲーム産業を中心としたコンテンツ産業論と社会情報学。2016年6月末に『日本デジタルゲーム産業史』 (人文書院)を刊行。

 


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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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