
投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。では、その実力に即した配当額とはいかほどなのか。今回、さまざまな経営指標から、独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額との差をランキングにした。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#26では、機械・重工業界80社の理論配当額との乖離額ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
独自に分析した“配当額の実力値”
それを上回る実績の機械業界の企業は?
投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。ガバナンス改革などを背景に、株主還元を意識する企業が増えており、累進配当の導入や配当性向アップなどをアピールする事例も増加している。
一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。配当よりも成長投資を優先する企業や、内部留保の確保を重視する企業も存在するためだ。
では、それぞれの企業の配当額の“実力”とはどれくらいなのか。そこで今回、純利益やPBR(株価純資産倍率)といったさまざまな経営指標を基に、重回帰分析によって独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額がどれくらい上回っているのかを算出し、その乖離額をランキングにした。
この理論配当額は、同じような企業規模や“スペック”の企業の水準を考慮した、ある意味「妥当な配当額」とも呼べるものだ。ランキングを見れば、単純な配当性向の比較だけでは分からない、企業のスペックに対して配当を多めに出しているといえる「本当の高配当企業」の存在がくっきりと浮かび上がる。
一方で、乖離額がマイナス、つまり理論値よりも配当額が低い「配当出し渋り企業」の存在も浮き彫りとなる。だが、それは裏を返せば「配当ポテンシャルの高い企業」と見ることもできる。企業の方針変更次第では、それだけ配当を増やす“余力”があると考えられるからだ。
では、理論配当額との差が大きい企業はどこなのか。今回は、産業装置やパチンコ機器製造など、幅広い製品分野を含む機械・重工業界80社のランキングを紹介していこう。
機械・重工業界の中には、輸出割合が高くトランプ関税のダメージを受ける企業や中国経済の不調が業績に響いている企業も多い。一方で、例えば発電用のガスタービン事業などが絶好調の三菱重工業のように、業績が波に乗る企業もある。
そうしたさまざまな機械・重工産業の中で、配当が手厚いといえるのはどの企業なのか。ダイキン工業、三菱重工、SMC、クボタ、ディスコ、マキタ、荏原、川崎重工業、SANKYO、IHI、THK、日本精工、ジェイテクト、ホシザキ、フジテック……。その結果をランキングでチェックしていこう。
また、ランキングでは、アナリスト予想を基にした3期後の配当性向も掲載している。これを見れば、配当がどの方向で推移しそうかもチェック可能だ。次ページで、その詳細を公開する。