アスキー創業者西和彦氏Photo by Kazutoshi Sumitomo

ビル・ゲイツとMS‐DOS、Windowsを開発、その後、袂を分かって日本に帰国し「アスキー」の社長になった西和彦氏。現在は、東京大学大学院でIoTに関する研究者として活躍するとともに、須磨学園の学園長として中等教育にも力を注ぐ。なぜ、経営者から研究者、教育者に転じたのか、また西氏の考える日本の教育の問題点も合わせて語ってもらった。

「最終学歴は高卒です」と
言われて涙し奮起

 31歳から43歳までのアスキー社長時代、私は「株式公開」から始まり「バブル」「リストラ」そして「身売り」「クビ」と、まさに天国と地獄を味わった。

 その後、紆余曲折を経て東大に身を置き、研究者としての生活を送っている今から振り返れば、いろいろあったにせよ「経営者の仕事は楽だった」と思っている。というのも、ある程度の大きさの企業の経営者の仕事はイエスかノーか、やるかやらないか、投資するかしないかといった判断中心だっただからだ。

 それに比べると大学の研究者は、非常にシビアな世界だ。まず研究のタネをまき、水をやり、葉を剪定して、花が咲くまで、全て1人でやらなければならない。業績評価も厳しく、研究の評価会議などでは「ポイントがずれている」「深みが全くない」「東大らしくない」など、ダメ出しをされるのは日常茶飯事のことだ。