マネジメントは学ぶことができる<br />しかし、あとからでは学ぶことの<br />できないものがあるダイヤモンド社刊
2520円(税込)

「マネジメントには2つの仕事がある。第1に、部分の和よりも大きな全体、すなわち投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す総体を創造することである。第2に、自らのあらゆる決定と行動において、ただちに必要とされるものと遠い将来に必要とされるものとをバランスさせることである」(ドラッカー名著集(14)『マネジメント―課題、責任、実践』[中])

 前者においては、ちょうどオーケストラの指揮者のように、多様な楽器を一つにまとめて、音楽を創造する。後者においては、石臼に鼻を突きつけつつ丘の上を見るという、アクロバティックなことをする。

 この2つのことのためにマネジメントが行なうべきことが、第1に、目標を設定することである。目標を持つべき領域を定め、そのそれぞれについて到達地点を決める。そのために行なうべきことを決める。

 第2に、組織することである。仕事を分析し、組織構造にまとめ、そのそれぞれについてマネジメントを行なう者を選ぶ。

 第3に、チームをつくることである。人事を行ない、上、下、横とのコミュニケーションを図る。

 第4に、評価する。そのための尺度を定める。それを上、下、横に知らせる。

 第5に、人材を育成する。そのなかには自分も含める。

 これら5つの仕事はさらに細分化して、その1つひとつについて学ぶことができる。ただし、ドラッカーは、これらのスキルだけでマネジメントの役割を果たせるわけではないという。

 狭いところで糸を結べるだけでは外科医になれないのと同じである。もちろん、目標を設定できないのであれば、マネジメントの役は果たせない。糸を結べなければ外科医になれないのと同じである。

 しかし、そもそもマネジメントとは人と働くことである。そのため、あとからでは学ぶことのできないある1つのものが必要となる。

「マネジメントにできなければならないことは学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が1つだけある。才能ではない。真摯さである」(『マネジメント』[中])

週刊ダイヤモンド