曽我弘さん(77歳)はシリコンバレーでは有名な日本人起業家だ。新日本製鐵で定年まで勤め上げた後、妻と2人でシリコンバレーに渡り、これまでに「7社か8社」(曽我さん)を立ち上げた。中には廃業した会社もあるが、96年に設立したSpruceTechnologies社は5年後の2001年、アップルに請われ、売却した。
「大事なのはリスクを取ってチャンスをつかむという姿勢。1人ひとりがリスクを取らないと、国家として駄目になる。1人ひとりが安泰だと思うことが国として危ない」と曽我さんは警鐘を鳴らす。
産業構造の転換が急がれている日本経済を救うのは、新しい技術やアイデアによる新規産業の創出である。大企業を税金で助けるより、起業を促進したほうが有意義だ。大企業に埋もれているノウハウや知識を、人材とともに掻き出すことで、日本は確実に活性化するだろう。
ただ、起業というと、安定したサラリーマンという立場を捨てる、ばくちのようなイメージが付きまとう。
しかし、いくら優良企業であっても、事業の統廃合や人事異動などで“自分の居場所がなくなる”という事態は起こり得る。
「大企業だって唐突に倒れることがあるし、リストラされる可能性もある。会社が生き残っても自分がいられないのなら、その人個人にとっては倒産と同じ。そう考えると、大企業なら安心というのは幻想にすぎない。むしろ起業のほうが選択権を自分で持てる」と語るのは、ベンチャー支援に特化した弁護士、会計士、社会保険労務士などの専門家集団・AZXプロフェッショナルグループの代表を務める後藤勝也弁護士だ。