存在感を増す企業年金

 これまで2回にわたり日本の年金制度の1階部分(国民年金)と2階部分(厚生年金、共済年金)を構成する公的年金について話をしましたが、今回からはその上の3階部分にあたる企業年金に話題を移したいと思います。

 AIJ投資顧問による年金消失問題によって最近にわかに注目を集めている企業年金ですが、普通のサラリーマンで企業年金に精通している方は少ないのではないでしょうか。50歳前後のオヤジ世代であれば、40代後半くらいで実施される老後に向けた社内研修等でおよそのことはご存じかもしれませんが、現役世代全体では不案内な方のほうが圧倒的に多いと思います。実際、入社や転職の際に給与水準は意識しても、退職金や年金のことまで考えて会社を選ぶ人は少数派でしょう。「若いときにそんな先のことまで考えられない」と思うのは当然ですが、受け取るのは遠い将来でも、退職金や年金も給与と同様、大切な生活資金です。ましてや、今後は公的年金の給付減額がほぼ確実なため、老後の生活を支える資金として企業年金が果たす役割はますます大きくなっています。

そもそも企業年金って何?

 現役世代が払った保険料を受給者に支給する「社会的仕送り」制度である公的年金に対し、企業年金は「自助努力」的な制度です。具体的には、現役時代に拠出する掛金を運用によって増やし、退職後に一時金や年金として受け取る仕組みになっています。公的年金も資産を運用しますが、あくまで保険料が足りない場合のバッファー的な位置づけである一方、企業年金は運用することが前提として設計されている点が大きく異なります。つまり、企業年金と資産運用は切っても切り離せない関係にあるのです。