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加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る

「1分間スピーチ」必修化で、国際発信力を強化しよう

加藤嘉一
【第10回】 2012年6月4日
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発信力の乏しい日本

 文部科学省をはじめ、すべての教育機関に対して思い切った提案をしたい。いまこそ「1分間自己紹介スピーチ」を、小学生の段階から徹底させてはどうか。

 国際社会が今日、日本に求めているのは「自己紹介」だと思う。日本という国はどういう問題を抱えていて、どういう強みと弱みがあって、何をしようとしていて、世界に対してどう貢献し、逆に世界に何を求めていくか――。

 いわゆる「失われた20年」を通して、日本の政治や経済、社会は大きく変化した。その日本の現状を、これまで日本の首相は、自己分析に基づいて国際社会に対し「自己紹介」したことがあっただろうか。

 野田佳彦首相は5月、北京での日中韓首脳会議、そして米ワシントンで開かれた主要国(G8)首脳会議(キャンプデービッド・サミット)に出席した。しかし、この間の野田首相の発信力には、またも国内外から疑問を投げかけられても仕方のない有り様だった。

野田首相を知らない中国人学生

 首相の発信力は、即ち日本全体の発信力に関わってくる。発信力とは「Vision(将来展望)」、「Action(行動)」、「Position(立ち位置)」の3つを正確に、的確に相手国に伝えられる力だ。野田首相がこの3つの視点において、外交の舞台でどういった内容の発言をするか次第で、国際社会、特に「世界市民(Global Citizens)」の日本に対する評価が決まる。

 日中韓首脳による共同宣言(5月13日)には、北朝鮮に関する文言が盛り込まれなかった。これは、北朝鮮を孤立させたくない中国にとっては「想定内の結果」(共産党外交担当関係者)だった。しかし、核、拉致、正常化問題などを包括的に解決したい日本としては思わしくない結果であったと言える。

 また、G8(5月18日)では、オバマ米大統領に「ともに行動を」と呼びかけられても、野田首相は具体的に応えることができなかったという。世界各国の政府・市民からすれば、日本はまぎれもなく「大国」であり、その首相が自らの言動で議論を引っ張っていくことを、「常識」だと考えている。野田首相の存在感が薄いように見えるのは、認識と現状のギャップが激しすぎるからだ。

 私は中国全土の大学に飛び講義をして回る「気合授業」リレーを敢行しているが、どの大学でも学生たちから投げかけられる質問に「日本の首相は、国際会議の場で何を言っているのか、何がしたいのか全くわかりません」というものがある。

 そもそも日本の首相は、海外では今や名前すら覚えてもらえていない。私は授業の最後に、必ず学生に「今の日本の首相を知っている人は手を挙げてください」と質問している。気合授業には、最低500人以上、時に3000人が参加する。そのうち「知っている」と答えるのは毎回、出席者の10~20%程度に過ぎない。学生たちは「頻繁に変わるから覚えられないよ」と笑う。日本の首相が変わる度に、毎回よく分からない主張を発信していたのでは、もはや世界は苛立ちしか覚えないだろう。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る

 「だったら、お前がやれ!」
この言葉が意味すること、それは「対案の無い無責任な批判はするな」ということだ。もともと、この言葉は加藤嘉一氏の亡くなった父の口癖だったが、加藤氏は自らの行動規範として常に心に留めている。相手に対して意見するとき、必ず自らに問いかける。
そんな加藤氏が今、憂いているのは、日本社会にあまりにも無責任な批判、意見、論評が多いということだ。本連載では、日本社会に蔓延る無責任な論評を、加藤氏の視点で切り込み、加藤氏なりの対案や考え方を示す。

「加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る」

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