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連載経済小説 東京崩壊
【第41回】 2012年6月18日
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高嶋哲夫 [作家]

生き残る道

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【前号までのあらすじ】
森嶋はマンションの前で理沙をタクシーに押し込んだ。そのときロバートがやってきた。ロバートはこれから中国に飛び北京でハドソン国務長官と合流するという。
その夜、森嶋はロバートの差し入れの牛丼を食べながら、ハーバード時代の論文をまとめた。数時間の仮眠をした後、テレビのニュースをチェックした。朝のニュースはインターナショナル・リンクが日本と日本国債を3段階格下げした話題で持ちきりだった。
その朝、森嶋が首都移転チームの部屋に行くと優美子が寄ってきた。森嶋は優美子に昨日はロバートに連れられて、インターナショナル・リンクCEOのビクター・ダラスと会ったこと、ユニバーサル・ファンドCEOのジョン・ハンターの動向などについて話した。しかし、村津に紹介されて六本木で室山と玉井に会ったことは言わなかった。
優美子としばらく話していると、村津と国交、財務、総務の3人の大臣が部屋に入ってきた。3人の大臣は、軽く頭を下げると最前列に並んで座った。村津は森嶋に話をするように促す。
森嶋はホワイトボードの前に立ち、ハーバード時代の2つの論文について話し始めた。森嶋の話は2時間に及んだ。最前列の3人の大臣はメモを取りながら、熱心に聞いていた。話が終わり、村津と大臣たちが出ていくと、森嶋の周りに部屋中の者が集まってきた。3人の大臣が来たことで、首都移転チームの雰囲気はガラリと変わった。
その後、森嶋と優美子は遅い昼食に出る。すると優美子の携帯電話が鳴った。財務省の同僚からで、日本国債が大量に買われているという。その時、森嶋の携帯電話も鳴った。理沙からだった。ユニバーサル・ファンドが日本国債を2兆円買い付けたという。彼らが所有する日本国債はこれで32兆円に。それに加えてCDS買いも同時にやっているらしい。理沙はユニバーサル・ファンドが戦争をしかけてきたという。しかし、いくら巨大ファンドとはいえ一民間企業が国家を破綻させることなど出来るのか。森嶋と優美子は、もしかしたらユニバーサル・ファンドの背後には中国が控えているのかもしれないと考え始めるのだった。


第3章

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 森嶋を見つめていた優美子が口を開いた。

 「なぜ日本の財務状況が世界最悪なのに、日本国債が安定した価格を保ち、利回りが1パーセント前後の世界最低水準を保ってるか分かってる」

 「国債の大部分が日本国民による国内貯蓄で買われているからだ」

 森嶋は何を今さらという顔で言った。

 「私もそう言ってきた。でも、それは結果。いちばんの理由は、日本国民は日本という国を盲目的に信じているからよ。どんなことがあろうと、自分たちの国が破綻するわけがない。だから世界経済がいかに不安定なときでも、日本という船に乗っている限り安心だ。沈むことはない。政府がなんとかしてくれる」

 優美子は森嶋に向かって、挑むような口調でしゃべり続ける。

 「そしてそれは事実だった。ただし、今まではね。昔は大蔵省、現在は財務省、金融庁、つまり政府と日銀がコントロールしてきたのよ。でも、急激なグローバル化でそれも難しくなってきた。日本政府や日銀の意思だけではコントロールできなくなってきた。世界経済との連動が強くなりすぎたのよ。経済規模が巨大になりすぎて、精神論だけじゃ、ついていけなくなった。リーマンショック、ユーロ危機がそうだった。でもまだ多くの日本人は、その恐ろしさを十分に理解していない」

 「じゃ、今後は政府も日銀も日本経済を護り切れないというのか」

 「残念ながら」

 優美子は森嶋を見つめて言った。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

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