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連載経済小説 東京崩壊
【第40回】 2012年6月15日
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高嶋哲夫 [作家]

暴落の糸口

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第3章

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 通話ボタンを押したとたん、理沙の声が飛び込んできた。

〈森嶋君、ユニバーサル・ファンドの動向が分かったわ。やはり日本国債の大量買いをやってるのよ。2兆円の買い付け〉

 「確かなんですか。1桁多い」

〈間違いない。私も3度、聞き直した〉

 「そんな金をどこから集めたんですか」

〈驚くのは早いわよ。彼らの所有してる日本国債は現時点で32兆円。これで外国人所有の日本国債が101兆円になった。これは国債発行残高の11パーセントに当たる。初めて外国人所有の日本国債の割合が2桁に乗ったのよ〉

 しかも、と理沙は続けた。

〈インターナショナル・リンクが日本と日本国債のランクを一気に3ランクも下げたあとよ。これって何を意味してるか分かる〉

 理沙は興奮を含んだ声で一気に言った。

 頬にやわらかい感触を覚えた。優美子が耳を携帯電話に近づけてきたのだ。

〈彼ら、何らかの操作をするつもりなのよ〉

 「何らかの操作って、何なんです」

〈知らないわよ。お友達のハンサム君に聞いてみて。CDS買いも同時にやってる。正確な額は分からない。でも、たがが外れたように、という表現だった。ついに、ユニバーサル・ファンドが戦争をしかけてきたのよ。世界中が、日本に注目してる〉

 森嶋は理沙の言葉を十分理解できなかったが、ユニバーサル・ファンドが本気であることは分かった。日本国債暴落の糸口をつかんだのかもしれない。

 「しかしそんな大金、一つのファンドがどうして動かせたんです」

〈問題はそこね。これにはすごい裏があるのかも知れない。私たちが想像もつかないような〉

 「なにか分かったら報告してください。僕も、理沙さんに報告しますから」

〈それって私のセリフでしょ。初めてじゃないの。あなたのほうから言い出すなんて。でも了解よ。協力しましょ。日本のためにね〉

 携帯電話は切れた。

 優美子が身体を離した。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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