中国の有人宇宙船「神舟9号」が6月16日午後、甘粛省の酒泉衛星発射センターから打ち上げられて無事軌道に乗り、打ち上げの成功が宣言された。4度目となった今回の有人宇宙飛行の任務は、宇宙での長期滞在だけではなく、地球を周回している無人宇宙実験機「天宮1号」へのドッキングを行うことだ。

中国初の女性宇宙飛行士は
貧しい庶民階級の出身

 宇宙開発に対する中国国民の関心は、これまでの有人宇宙船の打ち上げと違って、低下する傾向にある。膨大な開発費用がかかる宇宙開発よりも、庶民の生活に寄与できる民生問題の解決に力を入れるべきだという声もある。

 しかし、それでも今回の有人宇宙飛行はたいへん注目されている。その主な原因の一つは、中国初で世界でも56人目となる女性宇宙飛行士の劉洋さんが乗務しているからだ。

 1978年生まれの33歳で、人民解放軍の空軍将校を務め、飛行歴11年のパイロットだ。エリートコースを走ってきたように見える彼女は、実は庶民の家庭に生まれ、本籍は河南省林州市となっているが、実際にはお爺さんの世代から河南省の省都の鄭州市に移住し、工作機械修理工場で働いていた父親も、自動車製造工場の従業員の母親も鄭州生まれだ。共働き労働者夫婦の家庭で育った彼女は、高校までの成績が常にトップクラスだったので、空軍入隊を勧められた、という。

 学歴社会の中国では、就職は父親の実力と地位で決まるという傾向が強まっている。持ち前の勤勉さと勝ち気な性格の彼女は、貧しい庶民家庭の子から中国初の宇宙飛行を実現した女性宇宙飛行士になった。この成功ストーリーは、中国の国民に努力すれば成功できるというある種の希望を与えた。