今回の消費税増税法案の3党協議の結果、社会保障の改革部分は基本的に先送りにされた。その一方で、有識者や国会議員をメンバーとして、1年かけて年金・医療・介護・少子化対策などを総合的・集中的に検討する場である、社会保障制度改革国民会議(以下、社会保障国民会議)の設置が決まった。
「社会保障制度改革
国民会議」の意味合い
一見、先送りのための検討の場を作っただけ、という受け止め方が多いが、この会議の設置には、少なからずメリットがある。それどころか、うまく活用していけば、将来の政界再編につながる重要な場ともなりうる。以下、その理由を書いてみたい。
第1に、3党で社会保障の将来像を議論する場が設置されれば、次の選挙の争点から年金等の社会保障の問題は外すことができる。これまで民主党が政権を取る過程では、公的年金制度が明日にも崩壊するかのごとき宣伝が行われ、それが国民に誤ったメッセージを伝えてきた。
しかし今回は、年金など社会保障を選挙の争点に取り上げ、政争の具にするということが(全く行われないとは思えないが)少なくなるだろう。
第2に、自助努力を思想の柱とする自民党が会議に参加するということは、この場での議論で、民主党のばらまき的な社会保障政策を、もう一度見直すことになると期待される。
長寿化社会の下での年金支給開始年齢の引き上げや、デフレ下での年金増加額を抑制するマクロスライド発動、芸能人の実例から問題となった生活保護制度の見直しなど、国民にとって厳しい議論も行われるのではないか。
民主党政権下ではなしえない、社会保障の効率化にメスを入れることになれば、会議は成功だ。