自民党総裁選に立候補した上川陽子外相が、ダイヤモンド編集部の単独インタビューに応じた。成長戦略とその分配の在り方、成長力を強化するための産業政策、増大する社会保障費の負担などについて語ってもらった。特集『自民総裁選2024 政策を問う!』の本稿では、上川氏のインタビューを掲載する。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
2040年までに社会保障
制度の改革をする
――「成長を進めその果実を獲得し、所得を再分配するという(岸田政権の)姿勢を継承する」と言っていますが、成長戦略についてどう考えますか。
企業の内部留保は2024年3月末で約678兆円前後あります。これを設備や人材への投資に振り向けてもらうような施策を取ります。海洋分野、AIなど戦略的成長分野を特定し、資源を集中していきます。
私は自民党のリスキリングの小委員会の座長を務めました。働く人たちが自らのさらなる発展のためにリスキリングを重ねること、企業も国もそうした人材に対するジョブマッチングをしていく仕組みを作っていくことが重要だと思っています。
――分配の在り方については。
春闘におけるベースアップ、最低賃金引き上げなど賃金上昇の流れが出来てきています。ただ、現在、エネルギーや食料品などの価格が高騰し、賃金上昇がそこに追い付かず、今年の6月まで実質賃金がなかなかプラスにならない状態が続いてきました。政労使で対話を重ねて実質賃金を上げていくことを目標にします。
――今後、さらなる増加が見込まれる社会保障費の財源をどのように賄っていきますか。
年金、医療、介護、そして子育てに充てる目的で消費税率を引き上げ、国民に負担をしてもらいました。
私は日本の社会保障制度は世界に誇れるものだと考えています。団塊ジュニアの世代が65歳以上の高齢者となる2040年までに、持続性を高めるための制度改正をしたい。子育てや自分のリスキリングにおカネが必要となる現役世代の負担をさらに重くしては持続可能性が低くなってしまいます。
現役世代が大きく減少する2040年危機を乗り越えるためには、どうしても生活や所得の状況に応じた負担をしてもらわざるを得ません。高齢者の方も含めて能力に応じて負担してもらうことが大事だと思っています。
社会保障費の負担の在り方とともに重要なのは、給付の抑制である。次ページでは、上川氏が、その一つの方策として地方自治体レベルですでに効果を挙げている給付抑制の取り組みを広げていくと語る。成長力強化に向けた産業政策や、物価高対策、税財政の運営に関する考え方なども提示する。