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連載経済小説 東京崩壊
【第52回】 2012年7月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
高嶋哲夫 [作家]

嵐の前の静けさ

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 第3章

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 「ちょうど殿塚先生とお会いしていた。先生にも見ていただきたいと思ってね」

 村津は部屋の者たちを一瞥すると言った。

 森嶋は村津を国交省の首都移転チームのリーダーとしてダラスに紹介した。

 ダラスはすでに、殿塚については野党第一党の重鎮として知っているようだった。

 「勝手なことをして申し訳ありませんでした」

 森嶋は村津に小声で言った。

 「行きがかり上、こうなってしまいました。日本のこれ以上の降格は、なんとしても避けなければならないと思いました」

 村津も今日の朝からの状況は知っているはずだ。

 「悪いタイミングじゃない。しかしきみは顔が広いな。大統領補佐官、国務大臣の次は、格付け会社のCEOか。だが、これはやはり極秘事項に入るだろうな」

 村津はダラスに向き直り、流暢な英語で話し始めた。

 「この新首都の模型は、まだ公表されていません。決定されたものでもありません。しかし、私たちはこの首都の形に自信を持っています。新しい都市モデルでもあります」

 村津はダラスに新首都は10年後、あるいは20年後にさらに新しい場所に移る可能性を秘めていることを話した。

 ダラスは頷きながら聞いている。しかしその顔は半信半疑だ。

 「首都を移動させるというのですか」

 「バカげていると思いますか。しかし世界が変わっていくように、国も変わっていきます。変わらなければいずれ衰退します。さらに重要なことは、国民も変化していくことです」

 「だから首都も変わるというのですか」

 ダラスは考え込んでいる。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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