債務危機と金融システム不安で、いまだに揺れ続けている欧州。震源地であるギリシャとスペインでは、景気のさらなる悪化と失業率の上昇が伝えられているが、実際にはどのような状況なのか。両国への支援は無事、実行の運びとなるのか。現地からのレポートをお送りする。

 1年ぶりに訪れたアテネの町は、不況の影が一段と色濃くなっていた。町の至る所にシャッターを下ろした店舗や路上生活者が溢れ、セール期間中の書き入れ時にもかかわらず買い物客はまばらだ。高級服飾店や宝飾店が立ち並ぶ市内の目抜き通りにも、ギリシャ語で“空室あり”を意味する“ENOIKIAZETAI”の張り紙が目立つ。

 昼食に立ち寄ったスブラキ(ギリシャ名物の豚肉の串焼き)の老舗屋台では、店主が商売上がったりの様子で椅子に腰かけてたばこを吹かしていた。客の入りを尋ねてみたところ、無言のまま首を横に振って、深いため息をついた。

 経済情勢の悪化と社会不安の増大は、中核産業の観光業にも影を落としている。政府統計局の発表によれば、観光関連産業の総売り上げは2009~11年の3年間で累計22.6%落ち込んだ後、今年の1~3月期には前年比で24.0%減少した。総選挙の混乱とユーロ離脱観測が高まった4~6月期も観光客は大きく減少したもようだ。市内の歴史遺産を巡る2階建ての赤い観光バスにも空席が目立つ。無人のまま通り過ぎるバスも頻繁に目にする。デモ隊と警官隊の衝突風景ですっかりおなじみとなった美しい国会議事堂の前にも、観光客の姿はまばらだ。

 ギリシャは今年で5年連続のマイナス成長となることが確実視されている。1~3月期の実質GDP成長率は前年比▲6.2%、年間では▲7%前後に達する見込みだ。実質GDPの水準は、景気後退が始まる以前の07年と比較して累計で20%近く落ち込んだ。5年間で5分の1の国富が失われたことになる。

 日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)の標準税率は危機発生以前の18%から23%に引き上げられ、9%の軽減税率が適用されてきた飲食店での食事代も23%の標準税率に改められた。公務員は賃金や年金給付を大幅に削減され、政府の歳出削減で公共サービスの多くが削られた。資金調達難と預金流出に見舞われた銀行は貸し出しを抑制し、企業は投資を手控えた。失業率は08年5月の7.3%をボトムに、今年3月には21.9%に上昇した。この間の失業者数は35.9万人から107.5万人に増加。失業率は年内にも24%超に達するとの見通しもある。