線型管理会計は
「どんぶり計算構造」である

 〔図表 4〕のように「異常な損益計算書」が作成されるのは、ニッサンのせいではない。複利運用された預金利息を、単利計算で解析しようとするCVP分析(損益分岐点分析&限界利益分析)の「どんぶり計算構造」にある。

 年に4回のデータしか入手できぬ有価証券報告書や四半期報告書ではなく、年に12回のデータが入手できる月次決算を利用しようとも、1次関数(単利計算構造)を用いている以上、それは「どんぶり計算」なのである。

 誰も彼もが「線型原価計算・線型管理会計」の理論的な矛盾を理解せず、限界利益(貢献利益・変動利益)や、変動損益計算書といったものを得々と語る。現実の企業活動がどのようになっているのかを顧みることなく。

 だから、書籍やビジネススクールなどで語られる変動損益計算書や限界利益は、頭の中で空想した「モデル数値」に頼ることになる。上場企業の有価証券報告書などに基づいた変動損益計算書が、読者や受講生へ提供されることはない。なぜなら、〔図表 4〕のように、「異常な限界利益」と「異常な変動損益計算書」を現出させてしまうことになるからだ。

 ニッサンについて、その変動損益計算書を作成すれば、CVP分析の矛盾を一発で理解できるにもかかわらず、権威を信じて疑わぬ人々は「自らの手で、かつ、具体的なデータで」それを確かめようとしない。実務がどのようなものであるかを理解せずに語られる「線型理論(線形理論)」の恐ろしさを、〔図表 4〕で再確認していただきたい。

 筆者は、CVP分析の1次関数モデルを否定はしない。コストを、固定費と変動費に分解する手法は、それ自体が有用だからだ。しかし、それが実務に役立つものであるかどうかは、少なくとも「企業実務に携わる者」は、自らに問うべきであろう。実務家が「教科書の提灯持ち」であってはならない。

 筆者はいままで「我関せず」を貫いてきたが、「どんぶり計算」がはびこる現状にはウンザリしている。現在開発を進めている「原価計算工房Ver.7」は、複利計算構造を備えた「非線型原価計算・非線型管理会計」を目指すものである。2008年11月に出版した拙著『高田直芳の実践会計講座/戦略ファイナンス』以前には、いかなる書籍やシステムにも存在しなかった「非線型理論」に基づく。

 なお、〔図表 4〕の最終行にある当期純利益は、経済的単一体説に基づいている点に注意して欲しい。〔図表 1〕や次の〔図表 5〕も、「経済的単一体説の当期純利益」に基づいて作成している。

 これらの概念については、12年7月に上梓した拙著「[決定版]ほんとうにわかる財務諸表」(PHP研究所)や、第86回コラム(三菱ケミカルHD&旭化成)で詳述した。「親会社説の当期純利益」や「親会社株主に帰属する当期純利益」で管理会計や経営分析を語る時代は、もうすぐ終焉を迎えることを紹介しておこう。