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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「危機の時代」に突入した
グローバル経済に何が必要か?

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第4回】 2012年7月23日
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「大いなる安定」とは何か

 Great moderation──「大いなる安定」という言い方がある。

 金融危機に警鐘を鳴らしてきたイェール大学のロバート・シラー教授などが指摘するように、1980年代から2005年にかけての米国経済は非常に安定的な拡大を続けてきた。物価は安定しており、株価や地価も上昇を続けた。「大いなる安定」とはこの時期の米国経済を指す言葉だ。

 もちろん、この間も株価や景気に変動の波はあった。2000年に起きたITバブル崩壊のように、株価急落という出来事もあった。ただ、総じてこの期間の経済は堅調であった。

 1970年代の米国経済は、厳しいインフレと景気低迷に苦しんでいた。こうした動きに終止符を打った一人が、1979年から米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)の議長になったポール・ボルカーである。ボルカーの大胆な金融政策の結果、米国のインフレは沈静化し、物価は安定していく。

 変化のもう一人の立役者は、1980年に米国大統領に就任したロナルド・レーガンである。レーガン政権下で行われた大胆な規制緩和と減税の動きは「レーガノミックス」と呼ばれた。レーガノミックスによって、米国経済は活力を取り戻していく。

 たとえばマスコミで話題になることの多いアップルのスティーブ・ジョブズやマイクロソフトのビル・ゲイツが活躍を始めるのも1980年代以降である。米国経済は安定と拡張の一途を辿っていく。それだけでなく、米国の拡大は経済のグローバル化にもつながっていく。

 しかしその一方で、大いなる安定下における拡大は、米国経済にさまざまな歪みをもたらした。バブルとも思われる不動産価格の高騰。不動産市場が生み出したサブプライムローンのような歪んだ金融資産。過剰な消費と膨大な経常収支赤字で拡大を続ける米国経済の借金体質……。こうしたさまざまな歪みが表面化したのが、リーマンショックであると言ってよいだろう。ようするに大いなる安定によって生まれたバブルが崩壊したのだ。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

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