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野口悠紀雄の「経済大転換論」

「時間軸効果があったから
量的緩和に意味があった」とはいえない

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第28回】 2012年7月26日
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 前回、「時間軸効果」について述べた。「量的緩和政策は経済の実態面には直接の効果を与えなかったが、時間軸効果の点では有効だった」というのが日本銀行の立場である。この問題を、もう少し論じよう。

なぜ長期金利が下がるか?

 中央銀行が金融政策によって直接に影響を与えられるのは、短期金利である。

 これは、つぎのようなメカニズムによる。日本銀行は、公開市場操作で市場から国債などを購入し、その代金を日銀当座預金に振り込む。すると、銀行はコール市場で資金を調達する必要がなくなるので、コール市場の金利が下がるのである。

 前回述べた「時間軸効果」は、「中央銀行が金融緩和の継続を約束することによって、(直接的にはコントロールすることができない)長期金利に対しても影響を与えることが可能であり、その結果イールドカーブがフラットになる」というものだ。

 イールドカーブの理論に即して言えば、長期金利が低下するのは、つぎの2つの理由による。

 第1に、将来の金融緩和が約束されたために、借り手のリスクプレミアムが縮小する。

 第2に、将来の短期金利の期待値が低下する。

 実際のデータを見ても、量的緩和政策について「時間軸効果」が確認されるというのが日銀の立場である。

 これに関して、つぎの諸点を指摘することができる。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄の「経済大転換論」

日本経済は今、戦後もっとも大きな転換期にさしかかっている。日本の成長を支えてきた自動車業界や電機業界などの製造業の衰退は著しく、人口減や高齢化も進む。日本経済の前提が大きく崩れている今、日本経済はどう転換すべきなのだろうか。野口悠紀雄氏が解説する。

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