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連載経済小説 東京崩壊
【第57回】 2012年7月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
高嶋哲夫 [作家]

新首都の全容

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第3章

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 ロバートの言葉は正しかった。

 森嶋は翌朝のテレビ放送を見て声を上げそうになった。

 地震と富士山噴火の予知情報は完全に独り歩きを始めている。すでに世界中に様々な言語で増殖を続けているのだ。驚いたことにその情報量はすでに数百倍、いやそれ以上に膨れ上がっていた。

 関連情報が加えられ、加工され、過去の地震や火山噴火の動画までもが載っている。そして反論と支持する書き込みが、やはり世界に流れているのだ。敵はタネをまいた。あとは勝手に育っていく。ロバートの言葉が浮かんだ。

 株価も為替レートも大きく下がっている。市場はやはり真実よりリスクを嫌うのだ。危険を察したレミングの大群のように、リスクを回避するもっとも安易な方向に走り始めている。その先に何が待っているかも知らずに。

 携帯電話が鳴っている。

〈昨日はどこに連れてってもらったのよ。ボスのお気に入りさん。携帯電話の電源まで切って〉

 優美子の皮肉を込めた声が聞こえてくる。

 「僕はしょせんカバン持ちなんだ。村津さんの業者周りについてっただけだ」

 この言葉にウソはないはずだ。しかし優美子を納得させるものでもない。

〈みんなの不満もそろそろ限界よ。私たちはいつも蚊帳の外に置かれてる。あなただけが、なにが起こってるのか知っている。これって、やはりおかしいわよね〉

 冷静に畳みかけてくる優美子の言葉に森嶋には返す言葉がなかった。たしかにその通りなのだ。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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