ネット銀行の住宅ローンを検証する(1)
~A銀行のケース~

  現在、金利水準や諸コストなどから、最も魅力的な住宅ローンと評価されることが多いのが「A銀行」です(著書『いますぐに、住宅ローンを借り換えしなさい!』では、実際の銀行名で書いてあります)。
  融資事務手数料は5万円と安く、保証料も不要です。金利面も秀逸で、とくに長期の固定金利型は最低水準の1つと考えてよいでしょう。
 「10年間特約つき変動金利タイプ」以外の、通常の金利タイプ(変動金利型や全期間の固定金利型など)では、融資実行日ではなく、契約日の金利が適用されるという点も、資金計画を立てる上で好ましいといえます。

  ただし、「10年固定」などの固定金利選択型については、ずば抜けた条件の金融機関が他にもありますし、固定金利期間が終わったあとの金利優遇は0.7%(変動金利に移行した場合は0.4%)と少なめです。現状では基準金利自体が低いため問題はなさそうですが、将来的にもこの水準が続く保証はありません。
  ベースとなる金利水準は、新短期プライムレートなどに連動するのではなく、この銀行の資金調達コストをもとに決定されるため、他の金融機関と比べてダイナミックに変わる傾向も見てとれます。

  また、ローン残高が500万円未満になったあとから到来する金利見直し時期以降は、金利優遇がまったくない(=基準金利がそのまま適用される)という点も見落としてはならないでしょう。
  ここまでローン残高が少なくなると、抵当権を設定する際の司法書士への報酬や、定額タイプの融資手数料など、借り換えでかかるコストのうち固定的な諸費用の割合が高くなりますので、再び借り換えようとしても効果はまずありません。
  つまり、返済が終わる直前の数年間は結果的に高めの金利設定になる可能性があるわけで、住宅ローンの貸し出しというビジネスのアイデアとしてはすばらしいのですが、利用者は十分に留意する必要があるでしょう。
この銀行の場合、ローン残高が減ったあとは、こまめに一部繰り上げ返済を行っていくよりも、残高が500万円を下回ったあとの金利見直し時期に一括返済ができるよう、資金を蓄えておいたほうがよさそうです。

 なお、変動金利型は一般的なタイプとは仕組みが異なり、金利の見直しがあるごとに返済額も変わります。いわゆる「125%ルール」の適用もなく、将来的に金利上昇局面となった場合は、しばらくの間、半年ごとに返済額が増え続ける可能性があります。一部繰上げ返済は手数料なしでいつでも何度でも行えますが、「期間短縮型」のみで、返済額を減らすことはできません。

  通常の変動金利型の適用金利は、平成24年7月時点で0.98%(基準金利は1.6%)と低い水準です。保証料が不要な点を考慮に入れると、0.2%の保証料が必要な銀行などの0.78%に相当します。
  とはいえ、この金利が適用されるのは約半年~最大1年間だけ。その後は、直近の5月もしくは11月1日時点の基準金利から0.4%の優遇金利を差し引いた水準が適用されますので、現在の金利水準が続いた場合は1.2%となります。
  一般的な変動金利型のように、返済終了時までずっと同じ金利優遇が受けられるようなタイプではないという点については、とにかく留意が必要でしょう。