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連載経済小説 東京崩壊
【第59回】 2012年8月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
高嶋哲夫 [作家]

パニック

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第3章

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〈お昼のニュースです。今日は番組の冒頭で、政府地震対策本部の緊急発表をお伝えします。これは昨日から世界中に流されている東京直下型地震、富士山の噴火予知に対して、政府の災害対策の一つとして活動している、京スーパーコンピュータを使用した計算結果の発表です〉

 中年の男性アナウンサーが告げた。

 部屋中の者たちがテレビの周りに集まってきた。優美子も最前列で真剣な表情で見つめている。

 テレビ放送は、神戸の計算科学研究機構の一室からの生放送だった。

 大して広そうでもない部屋は報道関係者で溢れていた。

 中央に計算科学研究機構の有馬機構長、左に政府地震対策本部の井山部長、高脇は右側に座っていた。

〈これから発表することは先日の首都直下型地震の影響を考慮した、次なる東京直下型地震に対するシミュレーション結果です〉

〈先日以来、世界に配信されている地震と火山爆発の情報とは違うものですか〉

 機構長の言葉に記者席から声が上がった。

〈現在世界に流れているものは、私たちとはまったく関係ない情報です。出所も確認出来ておりません。私たちの発表は高脇東都大学准教授の研究が基礎になっています。高脇准教授には我々の研究チームに急遽合流していただき、より正確で緻密なシミュレーションを行ないました〉

 機構長はデスクのメモに目を移した。

〈予想される東京直下型地震はマグ二チュード8.6。最高震度は7。都内の各地で多数観測される模様。最悪の場合、4メートルの津波が東京湾を襲います〉

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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