シャープ、パナソニック、ソニーなど、長い間日本経済の屋台骨を支えてきた家電系企業の業績が低迷しているが、ソニーはものづくりとデジタルエンタテインメントビジネスの両立で活路を見いだそうとしている。ソニーグループ関連会社、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(SCEJ)と、ソニーマーケティングのトップを兼任する、ソニー・コンピュータエンタテインメントの河野弘取締役に、ソニーのデジタルエンタテインメントビジネスとマーケティング戦略について話を聞いた。

「安いからソニーにしよう」ではなく<br />「この値段でも買いたい」を目指す<br />――ソニー・コンピュータエンタテインメント取締役<br />兼ソニーマーケティング社長 河野弘氏インタビューかわの・ひろし
1962年生まれ。福岡県出身。85年慶応義塾大法学部卒、ソニー入社。90年ソニーヨーロッパインターナショナルで東欧ビジネスの立ち上げを担当。2003年ソニー・エレクトロニクス・インク(米国)でセールス、05年ソニー直営店舗・e-Commerceスタイル、09年ホームディビジョン各部でシニアバイスプレジデントを歴任。10年、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン プレジデント(現任)、12年ソニーマーケティング社長(現任)、6月ソニー・コンピュータエンタテインメント(ジャパンの親組織)取締役(現任)。

石島 あす30日発売のネットワークレコーダー&メディアストレージ「nasne(ナスネ)」は、先月19日に発売予定でしたが、発売日前日に急きょ発売延期になるという前代未聞の事態となりました。

河野弘取締役(以下河野) まずは、「ナスネ」発売を心待ちにされておられたお客様に、この場をお借りして心からお詫び申し上げたいと思います。本当に申し訳ございませんでした。

「ナスネ」は、100万台を発売した、プレイステーション3専用テレビ視聴・録画アプリケーション「トルネ」をご愛用中のお客様など、幅広い方から期待いただいていた商品でもあり、お客様、お取引先様の信頼を損なう憂慮すべき事態であると重く受け止めております。今後、一層の信頼回復に務めてまいります。

石島 「ナスネ」は地デジ/BS/110度CSのデジタル3波に対応したデジタルチューナー搭載のネットワークレコーダー&メディアストレージだけに、ロンドンオリンピック開催期という録画機がいちばん活躍しそうな時期を逃したことも、ビジネス的にはかなりの痛手でしたね。

「安いからソニーにしよう」ではなく<br />「この値段でも買いたい」を目指す<br />――ソニー・コンピュータエンタテインメント取締役<br />兼ソニーマーケティング社長 河野弘氏インタビュー(c) 2012 Sony Computer Entertainment Inc. All Rights Reserved.

河野 確かに、日本人選手大活躍の話を聞くたびに、「あ~『ナスネ』で見たかったなあ…」と残念に思ったことは事実です。夏は年末商戦の仕込みで忙しい時期なので、私はロンドンオリンピックをライブで見ている時間はなかなかとれませんでしたが、衛星放送だけでなく地上波デジタルでも結構放映されていましたよね。ですので、「トルネ」をご活用いただけていたらありがたいなと思います。