ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!Ⅱ」思考停止のニッポンをぶった切る

日中危機をアメリカで経験する葛藤
それでも私が中国に戻らない理由

加藤嘉一
【第2回】 2012年9月24日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 太平洋の向こう側が荒れている。

 北京大学周辺で、初めて反日デモの現場を目撃し、「中国人民が何を考えて、何に悩んで日本に抗議しているのか」を、身を持って感じてから早7年。あの体験は、その後、私が中国の論壇で発信していくきっかけになった。忘れられない思い出でもある。

 私は現在、太平洋のこちら側、それも大西洋に近い米ボストンに身を置いている。今は心のアルバムをめくりながら、国内外の各種報道に目を通して、現地の状況がどうなっているのか、想像を膨らますことしかできない。

 「真実はいつも現場にある」をモットーに執筆・言論活動に取り組んできた人間として、いまの自分の置かれた状況は、とてつもなく歯がゆい。

心ここにあらず……

 9月13日木曜日、私は北京で取材活動を続けている、あるジャーナリストと電話をしながら、野田政権が国有化の手続きを済ませてからの現地の反応を知ろうとしていた。

 彼から返ってきた言葉は「今週末は大変なことになるよ」だった。私も「国交正常化以来、最大規模の反日デモが起こる」という予感がしていたのだが、案の定、予感は的中し、現実となった。

 日中関係は日を追うごとに悪化した。40年前に国交正常化して以来、最大の危機に陥ったと言っても過言ではない。私は居ても立ってもいられない、落ち着かない気持ちになっていた。北京からボストンに拠点を移してから、わずか2週間強のあの段階で、すでに私は「心ここにあらず」の状態だった。

 「中国へ帰ろう。いま反日デモの現場にいなくてどうするんだ!? 言論に従事している人間が、いま世界が注目している現場にいなくてどうするんだ!?」

 部屋で一人、頭を抱え、自問自答を繰り返していた。

 日中両国は、緊張状態がピークに達していた。私はほとんど無意識のうちに、パソコンを開き、両手はすでにパソコンのキーボードを必死に打ちながら、北京行きの航空券を予約しようとしていた。ハーバード大学での仕事のことなど考えもせずに。

 フライトの時間帯やクレジットカードの情報など、すべてを記入し終え、最後の「購入」ボタンを押そうとした瞬間、不意に手が凍りついた。

 「本当にこれでいいのか?」
 「私は何のためにアメリカに来たんだ?」
 「これじゃあ、これまでと一緒じゃないか?」

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


おすすめの本
おすすめの本
「われ日本海の橋とならん」(ダイヤモンド社)

人の波がぶつかりあい、時代のエネルギーが炸裂する。アジアでいちばん激しく、生命力があふれた国、中国。その中国で「もっとも有名な日本人」となった著者が、内側から見た人にしかわからないリアルタイムの中国を語ります。そこから見えてくるのは、中国、日本、世界の現在。日本は、そして日本人は、これからいったいどこへ向かえばいいのか。私たちの課題もみえてきます。

話題の記事

加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!Ⅱ」思考停止のニッポンをぶった切る

「だったら、お前がやれ!」

 この言葉が意味すること、それは「対案の無い無責任な批判はするな」ということだ。「自分はどう考えるのか」、そして「自分は具体的にどのような行動をとるのか――」。何かに意見するとき、加藤氏は必ず自らに問いかける。加藤氏の行動規範としているものだ。
日本社会に蔓延る無責任な論評を、加藤氏の視点で切り込み、加藤氏なりの対案や考え方を示してきた本連載のシリーズ第2弾。2012年8月に加藤氏が拠点を中国北京から、米ハーバード大学ケネディースクールへ移し、新たなチャレンジをスタートさせる。2012年4月から8月までの第1弾とはひと味違う、加藤氏の言葉をお届けする。

「加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!Ⅱ」思考停止のニッポンをぶった切る」

⇒バックナンバー一覧