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外資系金融の終わり
【第3回】 2012年9月26日
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藤沢数希

顧客との利益相反を象徴する
投資銀行の株式調査部

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世界同時金融危機からユーロ危機に至る最近のマクロ経済の重要なトピックに、激変する金融業界の“赤裸々な内幕”を織り交ぜて解説する『外資系金融の終わり』が発売直後から大きな反響を呼んでいる。本連載ではそのメインテーマともいえる外資系金融機関の「報酬」と「組織」、そして金融システムの変化について、藤沢数希氏に解説してもらう。

株式調査部の不思議な役割

 投資銀行の株式部には株式調査部という部署がある。英語でエクイティ・リサーチと呼ばれるこの部署は、株式投資をする人はよくご存知のように、企業に「買い推奨」とか「売り推奨」のようなレーティングをつけている。こういった企業分析をする人をアナリストと呼ぶ。アナリストは産業セクターごとに分かれていて、たとえば自動車セクターのアナリストは、トヨタ、本田、日産などの自動車株の分析をしており、自動車業界の隅の隅まで精通していることになっている。

 投資銀行の顧客は金融商品の売買に対して手数料を払うのだが、もし売買の仲介だけなら、ミスがない、仕事がはやい、トレーディングがうまい(ソニーを100億円買うにしても、ヘタくそだとマーケットにインパクトを与えて高く買ってしまう)なども重要だが、これらはそれほど差別化できるものでもないので、手数料は安ければ安いほどいいということになってしまう。そこで、投資銀行は企業の分析レポートを書いて、顧客である投資家に情報提供することにより、高い手数料を正当化しようとしているのだ。

 具体的にいうと、株の売買手数料は、DMAだと1ベーシス・ポイント以下だが、リサーチの対価としての執行なら10ベーシス・ポイントといった具合だ。

 しかし、この株式調査部という部署は、矛盾に満ち溢れているところなのだ。株式調査部は、マーケット部門に所属するので、顧客は投資家ということになる。ところが同じ投資銀行の投資銀行部門では、企業の株式や社債の発行などの業務を行なっていて、ここでは顧客は投資家ではなく、アナリストの調査対象である企業となる。そうすると、株式調査部が手厳しいレポートを書くと、大変感じ悪い。だから、アナリストが手数料をたくさん払ってくれる上客の企業に対して「売り推奨」など出そうものなら、投資銀行の上層部からさまざまな圧力を受けることになるし、顧客企業からクレームが来たりする。

 つまり、投資銀行部門がソニーの経営者に、こんな企業買収しませんか、とか毎日営業しているのに、同じ投資銀行のアナリストが「ソニーのビジネスモデルは終わった、こんなクソ株はやく売ってしまえ」とはなかなか言えないだろうことは、サラリーマン諸氏なら理解できるだろう。

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藤沢数希 (ふじさわ かずき)

欧米の研究機関にて、理論物理学の分野で博士号を取得。科学者として多数の学術論文を発表した。その後、外資系投資銀行に転身し、マーケットの定量分析、トレーディングなどに従事。 おもな著書に『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』(ダイヤモンド社)、『反原発の不都合な真実』(新潮社)がある。
主催するブログ「金融日記」は月間100万ページビュー 。 http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/
ツイッターのフォロワーは7万人を超える。 @kazu_fujisawa

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外資系金融の終わり

世界同時金融危機からユーロ危機に至る最近のマクロ経済の重要なトピックに、激変する金融業界の“赤裸々な内幕”を織り交ぜて解説する『外資系金融の終わり』が発売直後から大きな反響を呼んでいる。本連載ではそのメインテーマともいえる外資系金融機関の「報酬」と「組織」、そして金融システムの変化について、藤沢数希氏に解説してもらう。

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