チュートリアルの福田充徳さんや次長課長の河本準一さんなど、なぜかお笑いタレントの緊急入院が目立つ「急性膵炎」。深酒の刺激などで膵臓内の消化酵素が活性化し、自分自身を自動消化してしまう痛い病気。膵臓周辺に広がると、激烈な腹痛や何時間も続く激しい嘔吐が生じる。

 厚生労働省の調査によると年間患者数は約6万人。男性に多く、発症のピークは50歳代。高齢になるほど重症化の傾向があり、最重症例では約1割が致死的な経過をたどる。若年~中高年期はアルコール性の急性膵炎が圧倒的に多い。基本的に経過はよいが、後遺症で糖尿病を発症したり、アルコール性は半数が再発を繰り返すので、避けたい病気の一つだ。

 この6月、英国の胃と肝臓の専門誌「GUT(オンライン版)」に、野菜豊富な食事で胆石性以外の急性膵炎の発症リスクが低下するとの報告が掲載された。延べ8万人以上の男女(年齢46~84歳)を対象に12年間追跡した結果、野菜摂取量が最も多かったグループは最も少なかったグループに比べ、急性膵炎発症リスクが44%も低下した。1日1ドリンク以上(ビール350ミリリットル缶1本程度)のアルコール飲料を飲んでいたり、BMIが25以上の人も、同じようにリスクが低下したのである。研究者は「野菜の抗酸化作用がよかったのだろう」と推測している。ただ、果物とリスク低下との関連は認められなかった。

 抗酸化成分が膵炎にいいらしい、という報告は数年前にもあった。この試験では非胆石性慢性膵炎の男女(平均年齢30.5歳)を2グループに分け、一方に抗酸化サプリメントを他方にプラセボを飲んでもらい、痛み症状を比較した。その結果、抗酸化サプリ摂取グループでは痛みが緩和され、鎮痛薬の使用が減った。また、32%で痛みが消失している。

 むろん、これだけで証明されたとはいえないが、野菜を含む抗酸化食品やサプリメントが膵炎の症状を緩和し、予防的に働くのは期待できそうだ。酒豪を自任するタレント諸氏にはぜひ、野菜の摂取をお勧めしたいものである。もちろん、われわれ一般市民にも。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド