方針だけだが、勇気は褒めたい
厚労省が厚生年金基金の廃止を発表
厚生労働省が、厚生年金基金制度を廃止する方針を発表した。もっとも、これは「方針」であって、まだ「決定」ではない。今月中に、制度廃止の具体的な方法に関する試案を発表し、これを社会保障審議会に設置する分科会などで検討して、来年の通常国会への法案提出を目指すというものだ。
年金は、利害関係が複雑だし、政治との関わりが深いので、立ち消えになったり、内容が大きく変わったりする可能性が十分ある。
しかし、この方針発表に関しては、大いに評価したい。
後述のように、厚生年金基金制度は大きな欠陥を持った不出来な制度なのだが、厚労省が厚生省だった頃から先輩官僚たちがつくり上げてきた制度であり、その産物たる厚生年金基金という組織では、多くの官僚OBが天下っていて、現在も職と収入を得ている。
何年先になるかは未定であっても、これを真っ向から否定し、廃止するというのだから、彼らの後輩である現在の官僚にとっては、勇気の要る行動だ。厚労省にも、問題に真面目に取り組み、かつ腹の据わった官僚がいるということなのだろう。
なお、厚生年金基金の問題は、AIJ投資顧問の不正事件に関する検討を契機に注目された経緯がある。新聞などにも「AIJ問題受け議論開始へ」(「日本経済新聞」9月28日朝刊5面)といった見出しが載っているが、「AIJ事件のような問題があるから、厚生年金基金制度がまずい」のではない。
むしろ、「厚生年金基金制度がまずかったから、AIJ事件のような問題が起こったのだ」というのが正しい因果関係だ。厚生年金基金制度の不具合をAIJ事件のせいであるかのように伝えるとしたら、不適切だ。
厚生年金基金制度は、何がまずかったのか。あえて3つにまとめると、「代行」の制度が悪かったし、基金運営のガバナンスが悪かったし、年金の運営を細切れにした(厚生年金基金は最盛期には1800以上の基金があった)ことが悪かった。