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森信茂樹の目覚めよ!納税者

政治ゲームの標的となった特例公債法案
成立させず混乱を起こした方が日本のため!?

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第36回】 2012年10月12日
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 「社会科学に実験はない」という。自然科学ならば、一定の仮説を立てて、モデルや数式を使い、実験室の中で、様々な結果を比較検証することが可能である。変数をいろいろ変えていくことによって、科学的にその変化を比べていけば、様々な有益な結論が導き出されることが多いだろう。

 しかし、社会科学の分野である現実の政策に、実験的アプローチを行うことは難しい。実験をしなかった場合の状況と、実験の結果生じた現象との比較が難しいうえ、ひとたび悪影響が出ればただちに中止します、というわけにはいかないからだ。

 とりわけ経済政策などに、実験的な政策を導入すると、実験的な政策に沿って行動した人々に不慮の損失や不利益などが生じた場合、国家はそれをどう認定し、損失をどう補てんするのかなども考えておかなければならない。そのようなことを事前に議論することすらはばかられるだろう。

 そこで、社会科学、とりわけ国家の経済政策には、小規模なものを除き、実験的手法はなじまないといわれてきた。

本格的な財政危機に向かう
引き金になるかも知れない

 こんなことを考えるきっかけとなったのは、与野党で特例公債法案の取り扱いを巡る政治ゲームが続いていることからである。

 今年度予算歳入総額90兆円のうち、税収・税外収入部分は46兆円あまり、財政法第4条に基づき発行できる建設国債6兆円弱と合わせて52兆円の財源は確保されるが、残りの部分、つまり歳入の4割強を占める赤字国債38兆円強は、特例公債法が国会で通らないと発行できない。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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