どのようにSNS上の
分断や炎上を防ぐべきか

 どうすれば、SNS上の分断や炎上を防ぐことができるのでしょうか。また自分自身がうっかり批判的なコメントを投稿しないようにするには、何に気を付ければよいのでしょうか。

 ひとつには「主語の大きな投稿には気を付ける」ことが挙げられます。主語が大きいとは、何らかの意見を言うときに「僕」「私」を主語にするのではなく、「世間」や「みんな」、男女や人間など、大きなくくりで一般化してしまうことです。

 会社でよくある光景に、管理職の人が隣の部署のスタッフに「僕はいいけど、君の上司の○○さんはどう思うかな」といった言い方で意見する、ということがありますが、これなども似たような状況でしょう。本来は自分には関係ない話、自分事ではないことに対して、当事者になったかのように話すやり方ですが、こういう場合、当の上司の○○さんは、当人に何も思うところはないということが往々にしてあるものです。

「正しい」と思うことを伝えること自体は悪いことではないとしても、誰が当事者なのかということをよく考えて発言すること、そうした発言の発信者が当事者なのかどうかの見極めも大切です。

 これは自分が「正しいことを言いたい」と思ったときにもよく考えてほしいのですが、「全員が正しい人でなければならない」という社会は息苦しいものです。先に町内会の例を出しましたが、全員が完璧な社会よりも失敗を許容する社会の方が「レジリエンス」、すなわち難しい課題や危機的な状況の下でも柔軟に対応し、回復する力があります。

 私は支援するクライアントから、よく「どうすればうまくいくでしょう」と聞かれます。そしてうまくいったこと、成功体験は共有されやすいのですが、他者が成功したことを同じようになぞっても、うまくいくとは限りません。一方、失敗した体験は皆さん、恥ずかしかったり思い出したくなかったりするので共有されにくいのですが、同じことをすれば失敗する確率が高い、貴重な情報なのです。

 こうした失敗談をTwitterやブログに書くと、非難を浴びることもあります。しかし社会にとっては失敗体験が世の中に出てこないのは損失です。そういう情報をあえて出す人たちには、敬意を持って接するべきではないでしょうか。

(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)