郵政消滅#7写真:朝日新聞社/時事通信フォト

全国に約1万9000ある旧特定郵便局。その大方の郵便局長が全国郵便局長会(全特)に属している。単なる任意団体にすぎない全特が、なぜ日本郵政グループに大きな影響力を持ち得るのか。特集『郵政消滅』(全15回)の#7では、全特関係者から入手した内部名簿を基に、その“魑魅魍魎”組織の全貌を浮き彫りにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

医師連盟、建設業連合会を凌ぐ
郵便局長の「異次元」組織力

 世の中では、迫る衆議院選挙における「与党の勝敗ライン」が話題に上り始めているが、郵政ファミリーによる「選挙の夏」もすでに始まっている。選挙は選挙でも、2022年に予定される参議院選挙のことだ。

 前回19年7月の参院選では、全国郵便局長会(全特。旧全国特定郵便局長会)が支持する柘植芳文氏(元全特会長)は、60万票という驚異的な強さを見せつけて、比例区でトップ当選を果たした(柘植氏のインタビューは本特集の#15『60万票を集めた全特会長出身の郵政族議員が激白「郵政見直しの勘所」』を参照)。

 16年参院選での組織内候補、徳茂雅之氏(旧郵政キャリア)より7.9万票を積み増したどころか、13年参院選で自身が集めた得票に17.1万票も上乗せする圧勝だった。

 16年比で19年に得票を伸ばしたのは、全特と日本看護連盟くらい。日本医師連盟(5.8万票減)や日本建設業連合会(6.1万票減)など、有力な支持基盤を持つ業界・労組系候補が集票パワーを落としているのを尻目に、全特の強さは目を見張るものがある。

 来年の参院選では、徳茂氏に替わって長谷川英晴氏(元全特副会長)が担ぎ出される。統治不全、不祥事の頻発、業績ジリ貧――。日本郵政グループの経営が混乱を極め、その存在意義が厳しく問われている一方で、全特の勢いはむしろ増している。

 数は力なり。今のところ、全特ほどに高いパフォーマンスを上げる「集票マシン」は存在しない。これだけの組織力を見せつけられると、与野党共に政治は全特の存在をむげにできまい。まさしく、腐っても鯛である。柘植氏に続き長谷川氏が完勝できるよう、全特は持てる力の全てを選挙に捧げようとしている。

 それにしても、郵便局長の“任意団体”にすぎない全特が、なぜここまで選挙に強いのか。なぜ日本郵政の経営に強い影響力を持つのか。

 ダイヤモンド編集部では、全特会員の郵便局長に配布されている内部名簿を入手。それを読み解くと、異次元の組織力を繰り出せる「秘密」が浮かび上がってきた。詳しく解説しよう。