本書の要点
(1)異邦人としての体験が、「異見」を取り入れる経営哲学を生み出した。
(2)方向性を決め、責任を取ることがリーダーに必要な資質である。
(3)コストカットは、いつまでにどうやればコストがいくら下がるのかを繰り返し検討し、実行する。近道などない。
(4)リーダーはまずは聞き役に徹する。結論が出ない場合も、期限を決めて考える。そして一度決めたらぶれないことが大切だ。
要約本文
◆異邦人
◇「異なるもの」の見方や考え方に触れる
銀行で働く父の転勤で、ニューヨークに引っ越したのは、小学校1年生の頃だ。学校の授業では、何日たっても周りの子たちが何をしゃべっているのか分からない。この当時から、40年以上も後にソニーのかじ取りを託されるまで、著者はこのような「異」なる場所を転々と動き続けてきた。その中で、常に「異なるもの」の見方や考え方に触れ、その「異見」を取り入れようとしてきた。
異邦人としての体験はニューヨークにとどまらなかった。小学4年生になり、日本に帰国することになったのだ。この時の方が、カルチャーショックは大きかった。
その後も地元の中学に進学する直前にカナダへ渡り、2年半後にまた帰国した。今度は東京にあるアメリカンスクールに通い、大学も留学生や帰国子女の多い国際基督教大学(ICU)を選んだのだった。
◇日本人として日本で生きる
海外で育った時間が長いからこそ、日本人として日本で生きると真剣に考えていた。父の助言もあり、CBS・ソニーに入った。
入社した1984年、ソニーはすでに世界的なブランドへと駆け上がっていた。ウォークマンは1979年に発売されていた。CBS・ソニーでは、外国部に配属、主に海外アーティストの日本でのプロモーションを手伝った。
◇丸山茂雄さんとの出会い
ソニー本体に忖度する気など一切ない雰囲気の会社の中で、後に著者の人生を大きく変えることになる大先輩に会う。丸山茂雄さんだ。プレイステーションの誕生を陰で支えた功労者であり、新しいイノベーションの種を育てる先駆者だった。