宅配便市場でヤマト運輸の強さが際立っている。最大のライバルだった佐川急便は、シェアこそ二分するも利益が伸びていない。だが、サービス進化と付加価値戦略で独走するヤマトに、思わぬ新たな敵の存在が浮上している。それは上客だったはずのアマゾンや楽天など巨大通販会社だ。独走が続く宅配のガリバー、ヤマトの最前線を追った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

 この春、インターネット通信販売大手のアマゾンが宅配業務で、大半を任せていた佐川急便からヤマト運輸に大きくシフトした。

 荷主による宅配業者のくら替えはよくあること。それでも、ネット通販の覇者、アマゾンの委託先替えとあって業界関係者の注目の的となった。

 アマゾンだけではない。

「最近、大口の法人客が佐川から当社に流れてくるケースが増えている」とはヤマト幹部。なぜ、アマゾンがヤマトを選んだのかは、後に詳述する。

 物流業界に詳しい複数の関係者は、「宅配便市場はもはやヤマトの独り勝ち」と言い切る。理由の一つには、ライバルの弱体化が挙げられよう。

 強力なライバルとなるはずだった日本郵政グループは、民営化の混乱の中で、ゆうパックと日本通運から引き取ったペリカン便の統合に失敗した。シェアを著しく低下させ、もはや敵とは呼べなくなった。

 宅配便市場でシェアを二分している佐川もしかり。

 ヤマトと佐川の業績差は2003年度以降、開く一方だ。上図に見られるように、佐川はシェアを伸ばしているにもかかわらず、利益が低下している。11年度の営業利益は、ヤマトホールディングス(ヤマト運輸の持ち株会社)667億円に対して、SGホールディングス(佐川急便の持ち株会社)303億円と、2倍以上の開きがある。