将来、青学の脅威となる大学は?

 さて、そう考えると、意外な大学の名前が浮かび上がってくる。

 箱根駅伝出場に向けたプロジェクトを立ち上げ、着々と強化を進めている慶応義塾大と立教大だ。両校からはそれぞれ、今年も去年も関東学生連合選抜に選ばれ、1名ずつが箱根路を走っている。

 やみくもに高校時代の実績で選手を引っ張る勧誘はしないだろうから、まだ少し時間はかかるだろうが、これらの大学に意欲的な「未完の大器」が集まる流れができ、チームが「才能を開花させる仕組み」を築き上げたとき、青学にとっては「脅威の存在」になるだろう。正直、慶応も立教もまだ本気度や熱量が低いように感じる。原監督を中心に、大学がバックアップし、今日の成果を実らせた青学をしのぐ激しい情熱が勝利の前提条件だ。

 もちろん、これらの条件で言えば、早稲田大や明治大などにも大いに可能性があるはずだ。条件その3を満たせるかどうかが、慶応も含め、これら伝統校の大きな障壁になるだろう。慶応はすでに日体大出身の保科光作コーチに現場の指導を託している。他大学も、OBにこだわらず、新しい指導理念を持った人間力ある指導者と出会い、抜てきできるかが重要な分岐点だろう。

 言い換えれば、今年も圧倒的な強さを見せた青学はまさに上記の条件を兼ね備えている。だからこそ、強い。よく知られている通り、原監督自身、青学のOBではない。そもそも青学が「中京大出身の原監督」に白刃の矢を立てた瞬間から、青学大の隆盛が始まったのだ。かつて一世を風靡(ふうび)した山梨学院大には順天堂大出身の上田誠仁監督、神奈川大には日体大出身の大後栄治監督の存在があった。

 大学の存亡をかけて大学全体で駅伝強化に注力する新興勢力と、青学と同じかそれ以上の「大学力」を持つ伝統的な総合大学が、相当なエネルギーを込めて駅伝強化に取り組めば、青学一強は決して容易には続かない。そして、箱根駅伝はますますスリリングで魅力的になるだろう。

(作家・スポーツライター 小林信也)