日本国内の花卉(かき)需要はピーク時の97年が6800億円であったのに対し、07年には5400億円にまで市場規模が収縮。わずか、10年で2割もの需要減少、いわゆる衰退産業です。

しかし、この業界で目覚しい躍進を遂げているのが、青山フラワーマーケットを展開する「パーク・コーポレーション」。売上高は年々増え続け、ここ十年余で52億円強(2011年)となっています。社長はニューヨークの会計事務所に勤めていた会計士。彼がどうやって儲けを出しているのか、その公式を分析してみましょう。今回は前編です。

アメリカ帰りの会計士が社長を務める
花屋の「儲けの戦略」

 ビジネスである限り、AKB48のようなアイドルであろうと、安全第一主義のJALであろうと、顧客の側に立って売上高や利益を愚直に考える必要があります。

 JALの稲盛氏がつねづね口にしている「売上を最大に、経費を最小に」というのを数式で表現するとこうなります。

利益= 売上高 ― 経費(コスト)― 損失(ロス)

 会計を知らない人でも、この理屈はわかるでしょう。「売上高」に代表される収益から、さまざまな「経費(コスト)」や、不可避的に発生する「損失(ロス)」、これらを差し引くことで、「利益」が残ります。

 こういったことを意識して、利益創出戦略を実践しているのが、青山フラワーマーケット(運営会社名、パーク・コーポレーション)という花屋さんです。この会社の社長、井上英明氏の対談記事(※1)などを参考に、今回は「利益」についての考え方を紐解いてみたいと思います。

 さて、農林水産省の統計データによれば、国内花卉(かき)需要はピーク時の97年が6800億円であったのに対し、07年には5400億円にまで市場規模が収縮しています。わずか、10年で2割もの需要減少、いわゆる衰退産業です。

 こうした中、街の花屋を尻目に青山フラワーマーケットは駅中を中心に躍進しています。00年に14店だった店舗数は11年には77店、売上高もここ十年余で8倍強の52億円余(11年)です。

 井上社長は、大学卒業後ニューヨークの会計事務所へ就職、その後帰国して起業という経歴で、もともと数字を知り尽くしています。彼が率いる駅中花屋のこの快進撃の秘密は、「人財育成」と「ロス低減」にあります。人材育成の部分は拙著を読んでいただくとして、この連載では利益を挙げるのに必要な、この「損失(ロス)の低減」をいかにうまく取り入れて、儲けを出しているかを分析してみたいと思います。

(※1)
佐々木かをりのwinwin対談
あすか会議レポート2009