「極東」の日本が欧米と同じスタンスを取ると何が起こるか

 日本も加わっている、ロシアに対する厳しい経済制裁は次第に効果を発揮している。しかも、まだ切り札は温存してある。ロシア産石油・天然ガスの禁輸は米国を除けばまだ発動していないが、これが行われるとロシア経済は崩壊することになる。

 しかし、崩壊するほど追い詰められれば、その後に現れるのは、前述の通り、中国が圧倒的に影響力を持つ「中ロ一体化」だ。それは、欧米よりも日本により深刻な影響がある。

 例えば、「サハリン1」「サハリン2」などの石油・天然ガス開発からBP、シェル、エクソンモービルなど石油メジャーが撤退することになった。一方、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事など日本勢は、現在のところ事業継続の方針を堅持している。

 欧米と日本で対応が異なるのは、地政学的に当然のことである。欧米は、極東ロシアから撤退しても世界中の他の油田・ガス田を開発すればいい。欧米にとって、文字通り「極東」は世界の果てなのだ。

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 だが、日本は極東にあり、中国と激しい資源獲得競争をしている。日本が事業から撤退すれば、それは即座に中国の権益となるだろう。周囲にチャイナタウンも建設されるだろう。日本の安全保障上、深刻な事態である。日本はギリギリまで事業継続を模索しなければならない。

 しかし、ウクライナ紛争の泥沼化が続き、経済制裁が長引くことになり、例えば米国のバイデン大統領が「極東の資源開発からの撤退」を日本に迫ってくる事態になったらどうするのだろうか。

 日本は、ロシアの「力による現状変更」を絶対に容認しないという立場を堅持し、欧米と協調してロシアに対する経済制裁を行いながら、中国の欧米・日本の資源の権益を奪取しようとする動きを防がなければならないという、安全保障上、極めて難しいかじ取りを迫られるかもしれないのだ。