シニア市場開拓を
難しくしている3つの要因

 しかし、拡大するシニア市場と新たなビジネスチャンスを求めて、シニア市場への参入してみたものの、従来の若者を対象とした市場との違いに戸惑っている企業も、実際は多いのではないだろうか。

 シニア市場は、シニアが持っている特性ゆえの難しさがありそうだ。mifデータからシニア市場を難しくしている要因がいくつか見えてくる。

 第一は価値観の多様化による消費ニーズの多様化・細分化である。長い人生の中には価値観に影響を及ぼす経験が多数ある。青春時代を過ごした環境、職場環境や家族構成、離婚やリストラの経験、病気の経験、孫の誕生など様々なことが個々人の価値観に影響を与えている。

 mifでいくつか例を見ると、60歳代離婚経験者は既婚者に比べて「気ままな生活をしたい」意向が7%(既婚者50%、離別者57%)高くなっている。また、孫の誕生は「自分ひとりの幸せよりもみんなの幸せを考えたい」意向を6%(孫がいる人56%、孫がいない人50%)増加させている。こうした様々な経験の積み重ねにより、価値観は多様化していく。価値観の多様化は、ひいては消費ニーズの多様化・細分化をもたらしている。

 第二は貯蓄があるにもかかわらず財布の紐が固いということである。mifによると「むだな出費はせずに、本当に必要なことだけにお金を使いたい」という意向が、シニア層(60歳代)は若年層(39歳以下)と比べると11%(シニア層83%、若年層72%)高くなっている。リタイアをすれば所得は減少する。今後の生活資金や万一健康を害したときのため、簡単に貯蓄は崩せないという意識もあるだろう。簡単には財布の紐を緩めてくれないのである。

 第三は商品・サービスの情報伝搬役が少ないことである。新商品がでると興味をもってすぐに購買する層をイノベーター、機能や価格面を吟味し自身にとって有益なものと判断すれば、購買活動をおこす層をアーリーアダプタと呼んでいる。mifによると若年層ではイノベータとアーリーアダプターの合計が21%なのに対して、シニア層は11%程度にとどまっている。シニア市場の場合、良い商品やサービスを開発しても、その良さをシニア層になかなか気付いてもらえず、その結果、普及が進まない、という状況が生じているのである(図3)。