「男性の育休取得率は年々上昇していますが、その取得期間というのはデータが少なく、あまり報じられていません。20年度の雇用均等基本調査(厚生労働省)では、育休取得者の3割(28.3%)が『5日未満』の育休にとどまっていて、18年度調査でも『2週間未満』が7割(『5日未満』36.3%、『5日~2週間未満』35.1%)を占めている。男性の育休期間は短く、どこまで妻の負担軽減につながるのか疑問が残ります。

 実際、取材していくなかで『育児を覚える時間もないまま育休が終わり、意味が感じられない』『子育ての戦力にならないなら、働いてくれたほうがマシ』と手放しで育休取得を喜んでいるわけではない女性側の声も聞きます。またパタハラ(パタニティ・ハラスメント)などの問題もあり、制度はあっても男性が育休を取得しにくい職場の環境、風土があることも多いです。

 日本のこのような状況下で、男性が育休を取れたとしてもごく短期間しか取得できず、実質的な父親としての役目を果たせていないことを、私は『名ばかりイクメン』状態と呼んで危惧しています」

 そう話すのは、『男が心配』(PHP新書)の著者で、20年余り男性の生きづらさをテーマに取材・調査を続けて男性の苦悩に寄り添ってきた近畿大学教授でジャーナリストの奥田祥子氏。パタハラとは男性従業員による育休など子育てに関する制度の利用を妨害したり、制度を利用しようとすると嫌がらせを行ったりすることを指す。

「男性100人に聞いたら、おそらく99人は『育休を取りにくい』と言うでしょう。それぐらい制度化されても取得できない雰囲気、無言の圧力が職場には存在します。実際に育休後、冷遇されたり、左遷されたりすることもあります。

 私が取材した事例の中には、育休から復帰後に、自身のそれまでの経験やスキルを生かせない業務を担当させるなどして成果を上げにくくし、人事考課でそれを根拠にして、長年実績を積んできた部署から畑違いの部署に異動を命じられた、というケースが何件もあります」

 育休を取得したことを契機とした処遇との間に因果関係があれば、違法行為である不利益取扱いに当たる。だが、この場合は、法律に抵触しないよう、育休取得から異動までの間に一定の期間を置くことで、因果関係の証明を難しくしている可能性もあるという。パタハラはよりいっそう巧妙化しているのだ。