年5日の有休付与義務とは?

 次の日、Aが助けを求めたのは、総務部のC部長だった。

「このままでは課全体が疲弊してしまいます。辞めたメンバーの代替えを、すぐに入れてください。それと有休の件ですが、このままでは5日どころか1日も取れません」

 他の部署は該当社員全員が9月末までに有休取得義務基準をクリアするというのに、設計1課だけがこの状況だと労働基準法に違反することになってしまう。それは会社としては避けたい……困ったC部長は、解決策をD社労士に相談することにした。

 次の日、D社労士にシステム設計1課の現状を説明したC部長は、

「メンバー全員が9月末までに5日間の有休が取れなかった場合、労働基準法違反になりますよね?」

 と尋ねた。D社労士はまず、年5日の有休付与義務の説明からはじめた。

〇 雇用した日から継続して6カ月間勤務し、なおかつ所定労働日数の8割以上出勤している労働者には、労働者の雇用形態に関係なく労働基準法で定めた日数の有休を付与する義務がある。
〇 2019年4月より、その年に新規に付与された法定の有休が10日以上の労働者に対して、毎年5日間の有休を取得させることが義務になった。(労働基準法39条7項)
〇 年5日の有休は、有休を付与した日から1年以内に取得時季を指定して取得させる。
〇 取得時季の指定方法は「会社が時季を指定する」「労働者が自らが請求する」「計画年休にする」のいずれも可能だが、できるかぎり労働者の意見を尊重するように努めることとする。
〇 すでに5日以上の有休を申請中もしくは取得済みの場合は、有休の取得義務の対象にはならない。


参考:厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説(PDF